変わったデザインの名作椅子を5選(Droog、フィリップ・スタルクほか)

わくわくするデザインの豆知識


世の中には名作と呼ばれる椅子が多くあります。

しかし中には、椅子としての機能があるのか?と思えてしまうものも。

今回は、そんな機能よりもコンセプト重視の尖ったデザインの名作椅子を、5つ紹介します。

5つを選ぶに当たっては、「100 Masterpieces from the Vitra Design Museum Collection」という、名作家具100選が載っているカタログを参考にしました。

ボリュームもあって充実の内容なので、興味のある方はお手にとってみてください。

photo of woman holding white and black paper bags

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1. RAG CHAIR(ラグ・チェア) / Droog,オランダ

Rag Chair(ラグ・チェア) 出典:1stdibs.com

ラグ・チェアはオランダを代表するデザイン集団、Droog(ドローグ)の1991年発表の作品です。

同じオランダの建築家、レム・コールハースなどからも影響を受けた彼らは、安価なリサイクル可能は素材で作られたコンセプチュアルなプロダクトは、世界中のデザイナーに衝撃を与え、コンセプチュアルデザイン(ダッチデザイン)というジャンルが確立してきました。

古着15着を積み重ね、バンドで束ねて作られた椅子は、大量消費へのアンチテージとして、見る者に非常に直接的かつ強く訴えかけてきます。

シェアエコノミーやDIYなど、近年当たり前のように語られる考え方をいち早く取り入れた作品とも言えます。

購入すると既製の状態で届きますが、ユーザーは自分の古着をリサイクルして椅子の一部としてデザインに含めることができます

自分の古着でアレンジした椅子は、持ち主にとって思い出の宝箱となるでしょう。

アムステルダムのShop@Droogにて筆写撮影

写真は筆者がアムステルダムのDroogのお店に行った時に置いてあったラグ・チェアです。

冒頭の写真のものとは色はもちろん、使われている衣服の種類も違って1つとして同じ椅子がないことが伺えます。

Droogは東京・恵比寿にもdroog shop & show room というポップアップストアがあるので、そこでこの椅子以外のユニークなプロダクトを多く見ることができます。

 

2. Well Tempered Chair(ウェル・テンパードチェア)/ Ron Arad,イスラエル

Well Tempered Chair(ウェル・テンパードチェア) 出典:stardust.com

ウェル・テンパードチェアは、1986年にRon Arad (ロン・アラッド)によって、ロンドンでデザインされた、4枚のステンレススチールを折り曲げ、ナットで留めただけのシンプルな椅子です。

まるで宇宙船の中にありそうな近未来的なデザインをしていて、座るとステンレスの座面がしなり、程よい弾力性が心地よく感じられます。

鉄板を切ったり、木や合板を曲げたり、異なる素材を無理やり接合させてみたりと新たな試みを常にチャレンジし続けるロン・アラッドだからこそ生み出せた作品だと言えます。

2002年にはステンレススチールから、素材をグラスファイバーに変えた“バッド・テンパードチェア”という作品も発表しています。

現在ではヴィトラ・デザインミュージアムにて6分の1ミニチュア版しか販売されておらず、そのミニチュア版も職人の手作りによって生産されているため、年間ほんのわずかしか生産されない希少な作品となっています。

 

3. W・Wスツール / Philippe Starck,フランス

W.W.STOOL(W・Wスツール) 出典:mydesignlife.com

W・Wスツールは地球外生命体のような独特のフォルムをした、鋳造アルミニウムで一体成形された椅子です。

フィリップ・スタルクが、映画監督ヴィム・ヴェンダースのために1990年にデザインしました。

彫刻のような椅子ですが、よく見ると実用的な側面もあり、3本脚の1本だけにある突起のようなものは、実はフットレストなのです。

フィリップ・スタルクの作品といえば日本でも浅草のアサヒビール本社の金色の雲のようなオブジェ(正確には聖火台の炎)を見たことある方も多いのではないでしょうか。

アサヒビール本社の金色の雲のようなオブジェ(正確には聖火台の炎)

W・Wスツールは、現在でも一部の海外サイトで販売されていますが、元々はデザイン家具大手のVitra(ヴィトラ)社より販売されていました。

興味があれば、ぜひ検索してみてください。

 

4. Pratone(プラトーネ) / Gruppo Strum,イタリア

プラトーネ(Pratone) 出典:archiexpo.com

プラトーネは、1971年にグフラム社から発売されました。デザインはイタリアのデザイン集団 Gruppo Strum (グルッポ・ストラム)です。

1972年、ニューヨークのMoMA(現代美術館)が主催した「イタリア:新しい国内の風景」展のカタログの表紙に選ばれたのをきっかけに、プラトーネはデザイン史の貴重な参考資料となっています。

椅子といってもご覧のとおり、巨大で不安定で、寝転ぶくらいしかできません。

42本の長くて柔らかい草のブレードは、手作業で加工されるため、製品の仕上がりには5週間の作業を要するようです。

鮮やかなグリーンと草の葉の柔らかさは、ポリウレタンを革のように見せることができるグフラックという特許を取得した特殊な塗料を使って塗装することで実現しています。

リスボンのMUDEやモントリオールのMusée des Beaux Artsなど、世界で最も重要な美術館に展示されており、今日でもアンチデザインの文化的革命のシンボルとして、椅子を使う人を座るという条件付けから解放した素晴らしい作品として称賛されています。

日本でもファッションディレクターのNIGOⓇ氏など、家具マニアの間では常識となっているようです。

 

5. Consumer’s Rest(コンシューマーズ・レスト)/ Stiletto (Frank Schreiner ),ドイツ

Consumer’s Rest(コンシューマーズ・レスト) 出典:artnet.com

コンシューマーズ・レストは、ベルリンのステレット・スタジオの創設者であるアーティスト、フランク・シュライナーにより1983年にデザインされた椅子です。

ショッピングカートそのままのデザインは、日常的な目的を再解釈し、1980年代の消費主義により買い物疲れした人々の心を体現しています。

クロームメッキされた金属ワイヤーとローリングキャスターで製造されたこの椅子は、皮肉にも1989年、ドイツのショッピングカートメーカーであるブリューダーシーゲルに生産を依頼し、本格的に販売されるようになりました。

子供用も販売されていたようで、ショッピングカートを乗りこなすという意味では子供にとってはしっくりくる椅子になっているのかもしれません。

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