NFT(エヌ・エフ・ティー)という言葉を、知っていますか?
この記事では「NFTの教科書」という本を紹介します。本書は、
- NFTが何なのかを知りたい
- NFTによって、未来がどう変わるのかを知りたい
という方に、おすすめです。
いま、NFTによって世界は大きく変わり、産業革命レベルのビジネス変化が起こりそうです。
良くも悪くも、私たちはこの流れを知り、対応していくことは必須でしょう。
本書では、NFTとは何なのか、世界がどう変わるのかを、多角的な視点から解説しています。
NFTをざっくり知るためにはちょうどいい内容になっているので、ぜひ一緒に学んでいきましょう!
1. NFTというデジタル資産とブロックチェーン
NFTとは、“ノン・ファンジブル・トークン”の略です。ファンジブルとは“代替可能”、逆のノン・ファンジブルは“代替不可能”という意味になります。ざっくり言うと、「NFT = 世界に1つだけのデジタル資産」です。
デジタル資産といえば、ビットコインやイーサリアムといった“暗号資産”が有名ですが、これらはNFTではありません。
暗号資産の場合、例えば、Aさんの1ビットコインとBさんの1ビットコインは、円やドルなどの現金通貨と同じように、まったく同じ価値のものです。
世界に1つだけではないという点において、暗号資産はNFTではなく“ファンジブル・トークン”、代替可能なデジタル資産になります。
ブロックチェーンは非中央集権
しかし、NFTもビットコインも、ブロックチェーン技術が使われている点では共通です。
ブロックチェーンとは、管理者が存在しない台帳のこと。公開された情報を複数のユーザーが相互承認して信用を付加していく、分散型台帳という技術を使っています。
これは、中央集権的な特定の権限者による管理とは異なります。
例えば、私たちが使っている日本円は、多くの人が相互に管理してはいなく、日本銀行が中央集権的に管理していますよね。
その点で、一般的な通貨の仕組みとブロックチェーンは違っています。
2. ブロックチェーンの主な特徴
また、NFTや暗号資産に用いられるブロックチェーン技術の主な特徴として、以下の3つあります。
- コピー・改ざんできないこと
- 価値そのものを移転できること
- 追跡可能、誰でも閲覧可能なこと
2点目の“価値そのものを移転できる”というのは、低コストで送金ができるという意味です。価値の移転という点では、お金と変わらないと思うかもしれません。
しかし、例えば通常の通貨であれば、銀行から海外送金をする時、複数の事業者を介したり、データの付け替えが行われたりするために、たくさんの手数料・コストがかかります。
一方で、ブロックチェーンを用いた仮想通貨であれば、余計なコストなしでダイレクトに送金することができます。
そのため、送金コストを劇的に下げることができるのです。
NFTは個別の識別サインが入れられる
3点目の、“追跡可能・誰でも閲覧可能”という点において、NFTはブロックチェーン技術による企画の一種とも言えます。
誰でも参加できる相互承認の仕組みになっているのは、NFTも暗号資産も同じ。
NFTのブロックチェーンの中には、いわば“個別の識別サイン”が入っているという点で違いがあります。
例えば、同じTシャツでも金メダリストの直筆サイン入りTシャツなら、全く違う価値を持つ1点ものになりますよね。
これと同じように、個別の識別サインを入れることで、世界に一つしか存在しないNFTには固有の価値が生まれるのです。
3. 2021年から急速に拡大するNFT市場
すでにNFTは、世界的に注目されています。2021年3月に開催された2つのオークションは、世界に衝撃を与えました。
1つはデジタルアート作家、ビープル(Beeple)こと、マイク・ヴィンケルマン氏のNFT作品が約75億3千万円で落札されたこと。
もう1つは、ツイッターの共同創業者で同社のCEOであるジャック・ドーシー氏のNFT化された初ツイートが、約3億1,600万円で落札されたことです。
アート作品が高額というのはまだ納得がいくかもしれませんが、1つのツイートに2億円以上の価値がつくというのは驚きですよね。
このように、すでにNFTの大きな取引が行われているのです。
NFTによってその価値が可視化され、グローバルに売買できることから、NFTの登場は「コンテンツや権利の流通革命」といわれています。
現在、毎日のようにゲームのアイテムやデジタルアート、トレーディングカード、音楽、各種の会員券、ファッションなどさまざまな領域で急速にNFT関係の新規ビジネスが立ち上がっています。
日本でも拡大するNFT市場
2021年9月、日本でもLINEやメルカリ、GMOインターネットグループ、楽天、mixiなど大手ネット系企業がNFTの取引所事業に参入。
NFTの市場規模は、2020年の段階でグローバルで400億円弱にすぎませんでしたが、2021年から急拡大しています。
日本でもNFTの活用が一気に注目されるようになり、超大手企業の本格的な参入が始まっているのです。
NFTは一時的なバブルである可能性がある点や、著作権保護の法整備が遅れていることなど諸問題もたくさんありますが、それらが整った後ではすでに市場は成熟していることでしょう。
技術は進歩していくのが必然ですし、学び始めるなら懐疑的な人も多い今からがおすすめです。
4. メタバースとは何か
メタバースという言葉を、聞いたことありますか? ここからは、メタバースについて、話を進めていきます。
メタバースとは、SF作家のニール・スティーブンソンによる造語で、インターネット上に構築される仮想の3次元空間。アバターなどを用いて接する環境とされています。
また、メタバースの条件については、アメリカのベンチャー投資家のマシュー・ボール氏が2020年に以下の7つの必須条件を示しました。
- 永続的であること:一時停止やリセットは存在せず無限に続く
- 同期的であること:実社会と同じく同期的な状態
- 無限の同時接続ユーザー:ユーザーそれぞれが存在感を持つ
- 完全に機能した経済:個人や企業が価値を生み出し報酬を得られる
- 実社会との垣根なし:リアル / バーチャル、オープン / クローズ、プライベート / パブリックにまたがる体験となる
- 相互運用性:プラットフォームの垣根を越えた体験
- 幅広い人々の貢献:個人や企業などが大量のコンテンツや体験を提供する
よく想像されているような、ヘッドセットをかぶってVRワールドで活動していることだけでは、メタバース呼ばないということです。
5. クローズド・メタバース、オープン・メタバース
フォートナイト、どうぶつの森、マインクラフトなどのクラフトゲーム系をプレイしたことある方も多いと思います。実は、これらもメタバースの一種です。
特徴としては、経済がそのアプリ内で閉じていることから、クローズド・メタバースと呼ばれています。
NFTはクローズド・メタバースではなく、アプリ間をまたぐようなオープン・メタバースをもたらしてくれるものです。
NFTの登場によって、複製可能なデジタルデータも、唯一無二のものとして判別可能となりました。NFTは、メタバースにとって以下の3つの重要な要素を持っています。
- 価値の希少性の担保
- アプリケーションを超えて所有し、行使できること
- 実質的な価値を持つこと
ゲームのアイテムに横断的な価値が生まれる
特に2つ目のアプリを超えて所有できる、デジタルアイテムを持ち越せることは、現行のインターネット・カルチャーの概念を覆すほど重要なポイントです。
例えば、今まではあるアプリケーションで買ったデジタルアイテムは、そのアプリケーションでしか使用できないことが大半でした。
しかし、NFTはどのアプリケーションにも属さない、ブロックチェーンに所有データが属しています。
デジタルアイテムが一つのアプリに限定されることなく、どのアプリの世界にも自分が購入したデータを持っていけるようになるということです。
NFTの登場により、あるメタバースで購入したアバターやアイテムが、将来的に別のメタバースで利用することができるかもしれないのです。
現実の物の多くは、メルカリやブックオフなどで、二次販売が簡単に行えますよね。
どこの服屋で買ってもメルカリで売れるように、NFTもどのショップで買っても互換性があればどこのショップでも二次売買が可能になります。
今までコピーが容易だったデジタルデータが、現実のルールに近づくことで固有の価値がつきはじめれたのです。
メタバースにおけるNFTは、土地や不動産、音楽、アート、ゲーム、ファッションなどのカルチャー、VRミュージックフェスなどのイベントチケット、さらにメタバース用のアバターやメタバース空間そのものがNFTとして取引されていきます。
6. NFTで資本主義はどう変わるか
ここからは、NFTを用いることで可能性のある、資本主義のアップデートについて解説していきます。資本主義のアップデートとは、株式会社の再発明です。
株式会社は蒸気機関以前の1602年、オランダの東インド会社で発明されました。
それまでは、事業をやろうとすれば、お金を稼いで貯めるか、借金するかしかありませんでしたが、株式会社という仕組みの発明により、ビジョンに賛同する投資家がいれば誰でも事業にチャレンジできるようになりました。
投資が続く限り事業が続けられることが、株式会社の画期的な点です。
個の時代
一方これからは、企業の時代ではなく“個の時代”です。個人が中心のエコノミーが生まれてきたのです。
例えば、ある男性Youtuberが面白い動画に挑戦したく、お金を集めたいとしましょう。
ここで、仮に株式会社としてお金を集めることに、一つの制約があります。投資家のために、成長し続ける必要があるという点。
つまり売上アップを続け、利益を増やし続けなければいけないのです。
そうなると、初めは自分1人で活動していたとしても、売上アップのために必然的に他の人を雇うしかなくなります。
彼は優秀なクリエイターではあっても、他の人を教育できないかもしれません。
教育できたとしても、彼のファンが見たいのは彼が育てた人ではなく、やはり彼自身のはずです。
クラウドファンディング2.0
本書では、著者の一人である国光宏尚氏のフィナンシェという会社が、この矛盾をNFTで解決すると言います。
フィナンシェでは、クリエイターは自分のやりたいことを実現する資金を集めるために、自分のトークンを発行します。それを買うのは、クリエイターのファンたちです。
ファンたちは、売上や利益を望んでいるわけではありません。基本的には、自分たちが出した資金でできたクリエイターの作品がリターンになります。
この仕組みであれば、稼ぎを増やし続けて金銭的なリターンを返す必要がないため、株式会社のような矛盾が存在しません。これこそが、株式会社の再発明。資本主義のアップデートです。
近年、クリエーターズ・エコノミーの資金調達面を支えるサービスとして、クラウドファンディングファンクラブやサロン、投げ銭型のサービスが行われていますよね。
フィナンシェで行われている活動は、それらと一線を画した、クラウドファンディング2.0とも言えるものです。
個人レベルの挑戦を後押しする仕組み
既存のクラウド・ファンディングでは、資金提供したファンに金銭的メリットがありません。一方で、クラウド・ファンディング2.0はトークンを発行するため、そのトークンを欲しい人が増えると価値が上がる可能性があります。
つまり、Giveだけではなく、金銭的メリットのTakeが得られる可能性があるということです。
このGive & Takeの仕組みなら、例えば海外に留学して将来的に新しい事業を起こしたいという若者がトークンを発行して、留学費の支援を募ることもできはずです。
将来成長しそうとか、夢を応援したいという人がトークンを買って、支援する人がたくさん出てくると株式会社の時代ではできなかった、この時代ならではのリスクの取り方をしたチャレンジが生まれてくるでしょう。
それは従来の資本主義的な価値観とは異なる、新しい価値観を持ったチャレンジになります。
これまでの株式会社をはじめとした、多くの資金を集めて大量生産するやり方とは違う、個人の挑戦を後押しする仕組みが生まれてきているのです。
今回紹介した「NFTの教科書」には、まだまだ紹介できていない部分が多いです。気になった方は、ぜひ手にとってみてください!