あなたは死ぬときのことを、日々想像していますか?
この記事では、ビル・パーキンスさんの著書「DIE WITH ZERO」を紹介します。
本書は、お金の稼ぎ方や増やし方ではなく、お金の使い切り方をテーマとした、少し変わった本です。
タイトルのDIE WITH ZEROを日本語訳すると、“ゼロで死ぬ”という意味。
必要以上のお金を貯め込むことを良しとせず、経済的な価値以上の本当の豊かさを追求することを目的とした内容となっています。
イソップ童話の「アリとキリギリス」を聞いたことありますか?
夏の間、勤勉なアリたちは、冬の食料を蓄えるためにせっせと働いていましたが、キリギリスは自由に遊んで過ごしていました。
その結果、やがて冬が来た時にアリは生き残れましたが、キリギリスは飢え死にしてしまう話です。
この話の教訓は、「人生には、働くべき時と遊ぶべき時がある」ということ。キリギリスの結末はもちろん悲惨なものでしたが、アリは幸せだったのでしょうか?
短い生涯で働きつづけ、楽しい時間を1つも持つことなくそのまま死んでいくとしたら、それが幸せだったと言えるのか。
今回はそんな人生をテーマとした本書の中から、特に重要なポイントを5つ取り上げて解説します。
それでは、早速みていきましょう!
<お金に関する書籍はこちらでまとめて紹介しています>
1. 今しかできないことにお金を使う
私たちは普段まるで、人生がずっと続くかのような感覚で生きています。
そのため、喜びを先送りして、手遅れになるまでやりたいことを我慢し、ただお金を稼ぐばかりな生き方になりがちです。人はいつか死ぬからこそ、限られた時間の中で最大限に命を燃やす方法を考えなければいけません。
例えば、90歳になって水上スキーを始めるのは現実的には難しいですよね。今やりたいことを我慢すればその分のお金は貯まりますが、十分なお金を得たころにはやりたかったことができない年齢になっているかもしれません。
大切なことは、自分が何をすれば幸せなのかを知り、その経験に惜しまずお金を使うことです。
まだ物心のつかない幼い頃に海外旅行に連れて行ってもらっても、アイスが美味しかった思い出くらいしか得られるものはありません。
一方で、90歳の時に富士登山をしようとしても、楽しめるかは分かりません。タイミングが重要で、時間とお金という限りある資源を使うにふさわしい時期に使うことで、私たちは豊かな人生を送れるのです。
2. 人生で一番大切な仕事は、思い出作り
人生は毎日、毎週、毎年の経験の合計によって決まります。最後に振り返ったときに、その合計された経験の豊かさが、どれだけ充実した人生を送ったかを測る物差しになります。
また投資と同じように、若いときに勉強した方が効率が良いのは、学んだことがその後もずっと使い続けることができるからです。
例えば、足し算のやり方を一度身につければ、その知識はその後生涯にわたって役立ち、リターンをもたらしてくれます。
これは人生の思い出でも同じで、経験からはその瞬間の喜びだけではなく、後で思い出せる記憶が得られます。
とても素晴らしい旅行を経験することで、その時に楽しかったというだけではなく、旅行で得た知識や思い出は、友達に話したり一緒に旅した人と思い出話にふけったりと、その後も繰り返し人生で再活用できるのです。
こうした原体験から新たに生まれる経験は、まさに記憶からの配当と言えます。
たいてい人生を豊かにする経験には時間とお金がかかるものですが、若くて元気に満ちたうちなら、お金をかけなくても経験から大きな喜びを得られます。
そして、得られた思い出は老後の時間を豊かにします。だからこそ、とにかく早い段階で経験に投資をするべきなのです。
3. 早死リスクと長寿リスク
私たちは自分がいつ死ぬのかを、あらかじめ確実に知ることはできません。
そのため、常に2つのリスクを抱えています。1つは早く死にすぎてしまう、早死リスク。もう1つは、長く行き過ぎてお金が足りなくなる、長寿リスクです。
早死リスクには、対処する方法として生命保険などがあります。
生命保険会社もあなたがいつ死ぬかを正確に知っているわけではありませんが、多くの人から保険金を集めることで統計的に死亡率を分析し、もし加入者が早死にした場合でも、利益を得ながらその家族に確実にお金が支払われる仕組みができています。
これは私たち個人にはまねができない仕組みなので、保険会社を利用することのみで、早死リスクに対処することが可能になります。
一方で、長寿リスクに対処する商品もあります。長寿年金と呼ばれているものです。これは生命保険とは反対の性質を持っており、長生きしすぎて資産を使い果たしてしまうリスクから身を守ってくれます。
例えば、60歳の時点で5,000万円の長寿年金を購入したとすると、その掛け金は一旦すべて保険会社のものになります。
その見返りとして、あなたは残りの人生の月々の支払いが保証されます。生きている限り、例えば20万円を毎月必ず受け取ることができるのです。
自分ひとりで長寿リスクに対処しようとすれば、不安を取り除くために予備のお金を大量に残しておかなければなりません。
長寿年金という仕組みを利用することで、死ぬ前に資産が尽きないようにしながら、生きているうちにお金を使い切ることが可能になるのです。
4. 子供には死ぬ前に与える
“ゼロで死ぬ” という話を聞いたとき、子供に何も残さないというのか?と思った方もいるかもしれません。
著者はそうではなく、子どもに与えるべきお金を取り分けた上で、残りの自分のためのお金を生きているうちに使い切るべきだと言っています。
そして子どもには、あなたが死んだ時の遺産として財産を残すよりも、死ぬ前に財産を与えるべきです。
FRB(連邦準備制度理事会)の調査によると、人が遺産を相続する平均的な年齢は60歳だそうです。
晩年になってから相続をすることが多いということですが、これでは子どもたちは受け取ったお金を最大限に活用できるタイミングを逃してしまいます。
子供がお金を最も必要とするのは、一般的に26~35歳くらいで、それを過ぎるとお金の価値はどんどんと落ちていきます。
子供に財産を分け与えたいのなら、金額のことだけではなく、できる限り最適なタイミングを考えるべきなのです。
5. 物事には賞味期限がある
著者のパーキンスさんは、娘が幼い頃にいつも一緒にお気に入りのディズニー映画を何度も観ていたそうです。
しかし、ある日突然、「もうこんな子供向けの映画は観たくない!」と言われてしまいます。
このように、どんな物事も永遠には続かず、人生は移り変わっていきます。やがて成長した娘のピアノの発表会を聞いたり、一緒に旅行に出かけたりして楽しむこともできますが、それもいつかは終わります。
そのうち、子供の成長を見守る父親としてのステージも終わります。
様々な経験の中には将来に先延ばしができるものもありますが、多くの経験は時期を逃すと二度と取り戻すことができません。
一番の悲劇は、死ぬ間際になって、機会を逃したことへの後悔を感じることです。その時には、もう生き方を改める時間すら残されていません。
タイムバケット
人生のステージの有限性を意識するためのツールとして、タイムバケットがあります。
まず、25~29歳、30~34歳というように、時間で区切り(バケット)を作ります。そこからあなたが死ぬまでに実現したいと思っているリストを書き出し、それぞれを実現したい時期のバケットに入れていきます。
するとリストの中には、人生の特定の時期に行なった方がいいものが見えてくるはずです。
登山をしたり、ロックコンサートに行くなら若い時の方が楽しめますし、古典小説を読んだりクルーズ船での旅行などは、歳をとってからでも楽しむことができます。
期間を明確にすることで、同じ期間に同時にやるのは難しいことや、具体的に段取りを組まなければ実現が難しいものがあることにも気づくと思います。
例えば、家族を持ってからでないとできないことや、独身の時の方がやりやすいことが明らかになれば、それぞれの人生のステージにおける優先順位が変わってきます。
タイムバケットを作ることで、漠然と死ぬまでにできたらいいなと思っていたことを、現実的な問題として捉えることができるようになるのです。
死ぬ前に後悔すること
死ぬ前に後悔することトップ2は、
- 勇気を出してもっと自分に正直に生きれば良かった
- 働きすぎなければよかった
の2つだそうです。老後に備えて生活資金を貯めなければと考えている人は多いですが、ほとんどの人は心配しすぎるあまりに使い切れないほどのお金をため込んだまま死んでいきます。
本書、ビル・パーキンスさんの「DIE WITH ZERO」はやりたかったことを十分にできなかったと、死ぬ間際になって後悔をすることがないよう、人生の早い時期から自分の価値観に向き合うことの大切さを教えてくれます。
この記事を読んで、興味を持った方はぜひ実際に手に取ってみてください!