あらゆる生物は、ただタンパク質欲を満たすために食べている。
しかしなぜだろう、あらゆる食品メーカーはタンパク質を希釈した超加工食品を市場に送り込む。
これは偶然なのだろうか。
この記事では、デイヴィッド・ローベンハイマーさん、スティーヴン・J・シンプソンさんの書籍「科学者たちが語る食欲」を取り上げます。
本書は、
- 痩せたい
- 謎の不調を治したい
- 脳の生産性を上げたい
という方にオススメです。
食事は肥満や体の不調にダイレクトに関わっているからこそ、食事について学ぶことはものすごく価値があります。
著者の2人はシドニー大学の世界的生物学者で、30年の共同研究で175本もの論文を発表しています。そんな彼らが語る食欲の秘密を見ていきましょう!
1. あらゆる生物は「タンパク質」ファースト
本書によると、あらゆる生物にとって、タンパク質は最も重要な栄養素と言っても過言ではなそうです。
多くの研究が示すように、生物は必要量のタンパク質摂取を優先させる傾向があり、私たちの食生活や健康管理において非常に重要な意味を持っています。
必要量のタンパク質を摂取すると、食欲は満たされますが、逆に必要量に達しない場合、食欲は収まりません。
この単純原理は、健康的な食生活を送る上で非常に重要な仕組みです。
タンパク質摂取のメリット
ここで、よく知られているタンパク質を摂ることのメリットを、改めて押さえておきましょう。
タンパク質は、以下のようなホルモンや酵素の原料になります。
- セロトニン(幸せホルモン):幸福感を与え、脳の生産性を向上させます。
- ドーパミン(やる気ホルモン):やる気や活力に関わります。
- その他:ノルアドレナリン、エンドルフィン、オキシトシンなど
これらは私たちの幸福度や脳のパフォーマンス、やる気、活力に直結します。
また、十分なタンパク質摂取には、
- 筋肉量の維持・増加
- 痩せやすく、リバウンドしにくい体質になる
- 肌や髪の美しさの向上
- 体調の改善
- 活力の増進
- 脳の働きの向上
といった多くのメリットがあります。このような様々なメリットからも、あらゆる生物が“タンパク質ファースト”であることが理解できると思います。
2. 現代社会の破滅的な食環境
生物は“タンパク質ファースト”であることを押さえたところで、現代社会の食環境は「破滅的」な状況に陥っていることに触れていきます。
その主な原因は、“超加工食品”があふれる社会構造にあります。
詳しく見ていきましょう。
超加工食品とは何か?
超加工食品は、高度に加工された材料と人工的な成分で作られる食品のこと。具体的には、以下のようなものが該当します。
- お菓子
- アイスクリーム
- チョコレート
- ファストフード
これらの食品には、一般家庭のキッチンでは滅多に使用されない、以下のような特殊な成分が含まれています。
- 高果糖コーンシロップ
- 水素転換油脂
- エステル交換脂肪
- たんぱく質加水分解物
さらに言うと、食品の嗜好性や魅力を高めるために、香味料、甘味物質、着色料、乳化剤、増粘剤、消泡剤、炭酸化剤、発泡剤、ゲル化剤、艶出し剤、といった様々な添加物も使用されます。
超加工食品は、
- たんぱく質や食物繊維、微量栄養素(ビタミン・ミネラル)が少ない
- 不健康な炭水化物が多い
- 風味を高める物質が大量に添加されている
といった特徴があり、過食と不健康な食生活を招く原因となります。
このような背景から著者たちは、超加工食品を「ペンキやシャンプーと同様の工業製品」だと評しています。
3. 人間本来の食事バランス
本来、あらゆる生物は、カロリー計算をしなくても、理想的な栄養バランスで食事をとるようにできています。
- 野生の動物には肥満がない
- 狩猟採集生活を送る一部の人間集団にも肥満者がいない
という事実は、野生の状態では生物が本能的に適切な栄養バランスを維持できることを示しています。
しかし、現代社会に生きる人間は、この本能的なバランス感覚を失い、工業化した社会において、食環境は著しく乱れているのです。
食環境の乱れの原因
では、なぜここまで食環境が乱れてしまったのでしょうか?
その根本的な原因は、人間特有の欲、特に金銭欲が関係します。
収益性の高い超加工食品を大量に販売し、消費を促進するために、企業は、
- 子供に対する積極的なマーケティング
- 健康効果をほのめかす紛らわしい表示
- 健康リスクの隠蔽
といった戦略を採用してきました。
これらの戦略は、一般大衆の健康への影響を顧みずに推進されてきたのです。
また興味深いことに、食品産業は製品の危険性に関する科学的根拠の歪曲、政府の政策や食事ガイドラインへの影響力行使とった、タバコ産業が用いた戦略を模倣していると言われています。
タバコの健康への影響はその箱にも記載があるとおり、誰もが知っている常識ですが、同じような戦略をとっている超加工食品には、公に言及されていません。
4. 自分のタンパク質必要量を理解する
現代の複雑な食環境において、健康的な生活を送るためには正しい知識を持ち、それを実践することが不可欠です。
ここからは、本書から厳選した以下の5つの知識を紹介していきます。
- 自分のタンパク質必要量を理解する
- 超加工食品を避ける
- 高タンパク質食品を食べる
- 食物繊維を摂取する
- 1日の中に食べない時間を作る
自分のタンパク質必要量を理解する
まずは、自分の必要なタンパク質量がどのくらいなのかを押さえましょう。
タンパク質必要量の計算は、以下の3ステップで行います。
ステップ1:ハリス・ベネディクト式で必要カロリーを算出
ハリス・ベネディクト式は、年齢、性別、活動量をもとに1日のエネルギー必要量を推定します。オンラインの計算ツールを利用すると簡単に算出できるので、こちらでまずは計算してみてください。
ステップ2:タンパク質の比率を決定
次に年齢に応じて、総カロリーに対するタンパク質の比率を決めます。
- 子供・青少年:15%
- 18-30歳:18%
- 妊婦・授乳婦:20%
- 30代:17%
- 40-65歳:15%
- 66歳以上:20%
一般的には、総カロリーの15%から20%をタンパク質から摂取することが推奨されています。
ステップ3:グラム数の算出
ステップ2で算出した値を4で割ります。これは、タンパク質1gが4kcalに相当するためです。
この計算が面倒な場合は、簡易的に「体重×1.0〜1.8g」を目安にすることもできます。
5. 超加工食品を避ける
先ほど紹介した「超加工食品」を見分ける簡単な方法は、その特徴的な成分を覚えることが近道です。
主な成分:高果糖コーンシロップ、水素添加油脂、エステル交換脂肪、たんぱく質加水分解物
添加物:香味料、甘味物質、着色料、乳化剤、増粘剤、炭酸化剤、発泡剤、ゲル化剤、艶出し剤
全ての成分を覚える必要はありませんが、食品を購入する際は裏面の成分表をチェックする習慣をつけましょう。成分表では、スラッシュ以降に添加物が記載されています。
高タンパク質食品を食べる
前半で述べたとおり、タンパク質は食欲を抑制する効果があるため、毎日摂取することが重要になります。
動物性タンパク質が豊富な食品:
– 鶏肉
– 豚肉
– 牛肉
– 魚
– 卵
– 乳製品
植物性タンパク質が豊富な食品:
– ナッツ類
– 豆類
両方のタイプのタンパク質をバランスよく摂取しましょう。
食物繊維を食べる
食物繊維は食欲抑制や腸内環境の改善に効果があります。
食物繊維が豊富な食品:
– 野菜
– 果物
– 全粒穀物
– 豆類
– きのこ類
– 海藻類
これらの食品を積極的に摂取しましょう。
1日の中に「食べない時間」をつくる
断食や間歇的断食は、細胞や DNA の修復を促進する効果があります。簡単な方法としては:
- 夕食を早めに済ませる(例:夜7時まで)
- 朝食を遅めにとる(例:翌朝8時)
これで、約12〜13時間のプチ断食が可能です。自分のライフスタイルに合わせて、断食の方法を選択しましょう。より詳しくは以下の記事でも紹介しているので、合わせて読んでみてください。
バランスの取れた食生活を心がける
ここまで知識を日々の生活に取り入れることで、より健康的な食生活を送ることができます。
特にタンパク質摂取量の把握は重要で、正確な計算が難しい場合は、体重に基づく簡易計算でも十分効果があります。
健康的な食生活は、単に知識を持つだけでなく、それを実践すること。超加工食品を避け、高タンパク質・高食物繊維の食品を選び、適切な食事時間を設けることで、より良い健康状態を維持できるはずです。
今回紹介した、デイヴィッド・ローベンハイマーさん、スティーヴン・J・シンプソンさんの書籍「科学者たちが語る食欲」についてより詳しく知りたい方は、ぜひ本書を手に取ってみてください!