脳はいつまで成長すると思いますか?
この記事では、「脳医学の先生、頭がよくなる科学的な方法を教えてください」という本を紹介します。
本書は、
- 脳のパフォーマンスを上げる方法を知りたい
- 科学的根拠に基づく信憑性のある情報を知りたい
という方におすすめです。
脳は成長期までしか成長しないのではないかと思っている方も多いかと思います。しかし、大人でも脳のパフォーマンスを上げる方法はあります。
そのカギは、運動・趣味・コミュニケーション・食事・睡眠・幸福感の6つ。
本書では、大人でも脳を成長させることができることを、多くの論文を根拠にわかりやすく解説されています。
今回は、その中から特に重要な部分をピックアップしてお届けします。それでは、さっそく中身をみていきましょう!
1. 頭が良くなる方法
脳を成長させるには、子どもの頃の過ごし方が大事ということは常識。かといって、“大人になったらもう遅い”ということはないと著者は言います。
さらに、脳を成長させる方法は、基本的に子どもと大人で方法と同じだそうです。
そこでまずは、子どもの脳を成長させる5つ要素を紹介します。
- 熱中体験
- 知的好奇心
- 自己肯定感
- しなやかなマインドセット
- 生活習慣
の5つです。順に解説していきます。
熱中体験について
多くの人は頭をよくするには、机に向かって座学をする必要があると思うかもしれません。しかし、必ずしも座学でなくても、興味を持ったことをとことんやらせることが良いことが分かっています。
著者が以前、「東大脳の育て方」という本の監修を行ったときに、東大生によく見られる共通点は勉強ではなく、音楽やスポーツ、ゲームなどで並外れた熱中体験にあったことが判明しました。
子供の頃に熱中体験をすることで、他のことにも応用できる集中力が養われるのです。
このあたりは、夢中になることを突き詰める「モンテッソーリ教育」が流行っていることからも、効果が期待されます。
あなたの過去にも時間を忘れて、何かに熱中した経験がきっとあるはずです。
知的好奇心について
熱中体験は集中力だけでなく、知的好奇心も育めます。
例えば、子どもとサッカー観戦に行ったとします。
その時、活躍した選手の名前や過去の成績、経歴などをどんどん知りたくなり、誰にも強制されていないのに、気がついたら膨大な量のデータを自然と覚えてしまうことが起こります。
これが、知的好奇心の力です。
著者は、知的好奇心こそが、脳の成長の原動力だと考えます。
テスト勉強で興味のないことの暗記は辛くても、趣味関心のあることなら苦もなく自然とスラスラ覚えられる経験は、誰にでもあるはず。
また、興味のあることを覚えやすいことには、根拠があります。
脳には扁桃体という「好き / 嫌い」を判断する領域があります。扁桃体は記憶力を司る海馬のすぐ近くにあり、お互いに密接な関係にあります。
だからこそ、自分が好きだと思えることを、積極的に深堀りすることは脳の記憶力を鍛えるために理にかなっていると言えます。
自己肯定感としなやかマインドセットについて
人生において、自己肯定感が大切だと知っている人は多いと思います。
では、具体的にどうすれば、それを高めることができるのでしょうか?
著者はその答えを、結果ではなく努力を褒めてあげることが大切だと言います。
人は努力を褒められると「自分は成長できている、失敗してもまた挑戦すればいい」と思えるようになり、自己肯定感が高まります。
小学5年生を対象としたある研究では、努力を褒められた生徒は成績自体を褒められた生徒よりも、その後の学習の達成意欲が高く、失敗しても課題に前向きに取り組める傾向があることが分かったそうです。
もう少し年齢の高い大学生を対象にした研究でも、自分は成長していると感じられた学生は、そうでない学生と比べ、自ら学習目標を設定し、失敗から立ち直る能力が高い結果が出ています。
この“失敗から立ち直れる柔軟な気持ち”を、著者はしなやかマインドセットと言います。
生活習慣について
寝る子は育つという言葉は、身体だけでなく、脳にも当てはまると著者は言います。十分な睡眠を摂れば、脳はしっかりと成長していきます。
同様に、食事からちゃんと栄養を摂り、体を動かして運動することも、脳の成長に必要な土台作りに重要です。
睡眠・食事・運動といった生活習慣が、頭をよくするための基本になります。
2. 脳を若々しく保つ方法
成長した脳を若々しく保つ方法として、高い効果が期待できるものが3つあります。
運動・趣味・コミュニケーションです。
またこれらの他にも、食事・睡眠・幸福感の3つもありますが、今回はこれらの中から、運動と幸福感をピックアップして説明します。
運動について
運動は体のみならず、脳の健康にも良いです。
酸素をたっぷり吸って行う散歩などの有酸素運動を行うと、脳への血流が増加します。
すると、脳内では特定の細胞の成長を促す、脳由来神経栄養因子、インスリン様成長因子、血管内皮増殖因子、線維芽細胞成長因子などのホルモンが放出されます。
これらのホルモンによって、脳の成長や維持に必要な栄養が行き渡ります。
運動が脳に与える影響については、例えば中年期に週2回以上運動を行うと、認知症リスクを約40%下がり、特に遺伝的に認知症リスクの高い人に効果があることが分かっています。
では、どの程度の運動をすれば良いのでしょうか?
本書では、理想的には息が過ごし上がるくらいの早歩き、散歩やジョギング、またはそれ以上の激しい運動を週に3回、1回45~60分程度やることを勧めています。
そこまで長い時間が取れない場合は、なわとびを10分程度行うことや筋トレをするだけでも脳機能の維持に効果があります。
幸福感について
自分が幸せだと感じることを、主観的幸福感と言います。
この幸福感についての研究によると、幸せだと感じることで、脳に良い影響があるということが分かってきています。
例えば、不幸だと感じている人より、日常的に自分は幸せだと感じている人の方が、約14%長生きできると推定されています。
14%を先進国の寿命に当てはめると、7年半〜10年に相当します。幸福感が高い人とは、具体的には、
- 自分の好きなことを、思う存分楽しんでいる
- 社交性が高く、社会と積極的につながっている
- ボランティア活動のような利他的な活動をしている
といった人です。
さらに、社会的に成功した人は、主観的幸福度が高いという指摘があります。これは、成功できない人は不幸のままなのでは?と思うかもしれません。
しかし、もともと幸福感の高い人が持ち前のポジティブシンキングを発揮して、結果として成功したとも言えそうですよね。
ただし、“自分だけ幸せになればいい”と自己利益を追い求めると、人が離れていき、結果的に孤独を強く感じるので要注意です。
成功のための原動力として幸福感を高めたいのなら、ボランティアや社会貢献などに取り組むことも有効です。
お金持ちが社会貢献の意識に目覚めているケースは多く、例えばビル・ゲイツなどは自ら財団を立ち上げています。
一方で、後ろ向きな性格にも、それはそれでメリットがあります。
分かりやすいデータとしては、子供の頃に不安傾向にあると、大人になってから致命的な事故を起こしにくいというもの。
また別の研究では、不安を感じやすい人ほど、他人の心の状態を敏感に感知することができ、共感能力が高いことが分かっています。
どんな性格であろうと自分の感情をコントロールできるようになることが、持続的な幸福感に繋がります。自分の感情をコントロールするためには、どんなときにどんな反応を示しやすいのかを把握しておくことが出発点です。
自分のことを客観的に見ることを、メタ認知と言います。
これこそが、どんな人でも幸せをつかむためのカギを握っていると、著者は断言しています。
3. 幸福のカギはメタ認知
ここからは、自分の感情をコントロールするためのメタ認知の方法について、
- あるがままを受け入れる
- メタ認知ができるようになるレッスン
の2つのポイントを解説していきます。
あるがままを受け入れる
メタ認知の第一歩は、自分の気持ちに気付くこと。
この自分の気持ちを客観的に見ると同時に、他人のことも客観的に見ることで、感情的な判断をせず、自分も他人もあるがままの事実として受け入れるようになります。
例えば、自分が親だとすると、親は子どものことはよく知っている、客観的に見ていると思いがちです。
しかし実際には、子どもにはこうあってほしいというバイアス(偏り)や押し付けから抜けられない部分があります。
このようなバイアスを取り除き、子供のことを客観的に見られるようになれば、いま子どもに本当に必要なことを的確にアドバイスができる可能性が高まります。
しかし、客観的にメタ認知することは、そう簡単ではありません。自らが置かれている環境や、自分にとっての課題などを客観的に認識することはとても難しいです。
なぜなら、脳は普段猛スピードで様々な情報を処理していて、自分自身に関する情報を扱う余裕がないからです。
あなたは、仕事に追われている時に、自分に関することをどれだけ考えられるでしょうか?
デジタルデトックスという、一定期間スマホやパソコンなどのデジタルデバイスから距離を置く方法が一時期話題になりました。これも、一種の自分に関することを考えるための時間を取る手段です。
あえて自分の時間をつくり、自分の脳のクセに気付くことが、メタ認知に繋がります。
メタ認知ができるようになるレッスン
メタ認知は何歳からでも身につけられます。まずは、一度立ち止まって考え、あるがままを受け入れることから始めましょう。
いきなりは難しいですが、日々少しずつ意識して取り組んでいけば、人生が変わると著者は言います。
自分や他人に関して許せないと感じるときに、あえてそれを受け入れるとメタ認知、感情のコントロールにつながります。
これにより、自分を卑下することがなくなり、周囲への接し方もガラッと変わります。
また、あの時メタ認知できていなかったなと気付くことでも、脳の中でメタ認知に関するネットワークを使ったことになります。
それを繰り返していけば、脳の中のメタ認知に関するネットワークは太くなっていきます。
脳の成長を止める一番の敵は、“あきらめ”です。
自分の脳の良いところ悪いところをあるがままに受け入れ、卑下しないという気持ちで臨めば、成長できるはずです。
できることから、コツコツやっていきましょう!
今回紹介した「脳医学の先生頭がよくなる科学的な方法を教えてください」については、まだまだ紹介できていない部分が多いです。
もっと頭が良くなる方法について知りたいと思った方は、ぜひ手に取ってみてください!