『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』要約(意思決定の新たな方法)山口 周

ハッとさせられる考え方・哲学

 

この記事では、「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」を紹介します。著者は「武器になる哲学」や「ニュータイプの時代」などの話題の本をいくつも出されている山口周さん。慶應義塾大学大学院を修了後、電通、ボストン・コンサルティング・グループ、A.T.カーニーといった名だたる企業で勤務されてきた、まさに“エリート”です。

そんな山口さんが、ビジネスマンに向けて書かれた本書ですが、この本のタイトルは実に戦略的に決められています。その理由は最後に。この記事を読めば、本書のエッセンスを理解できます!

 

1. サイエンス思考のビジネスが危険な理由

person wearing suit reading business newspaper

まずは本書で取り上げている3つの言葉の定義についてです。

  • サイエンス = 理性や論理
  • クラフト = 経験や知識
  • アート = 感性や直感

この中で多くのビジネスはサイエンス思考が重視され、それは危険だと山口さんは言います。ではなぜ危険なのか。その理由は以下の3つです。

 

1.論理的情報処理スキルの限界

様々な要素が複雑に絡み合う不確実な世界では、論理的な思考では答えを導き出せません。このような状況では、エビデンス(根拠)がいくつあっても足りず意思決定ができないでしょう。また、論理だけで考える答えは多くの人も行き着く考えのため競争が激化し、こうした状況に疲弊していく一方になってしまいます。

 

2.システムの変化にルールが追いつかない世界

変化の遅い世の中では明文化されたルールがあって、それを基準として判断することでもやっていけたが、変化の激しい昨今では倫理的に判断し後から法が着いてくるような状況が生まれています。

このような状況の場合、たとえその時には法的に問題がないと判断したものでも、後に法が追いついて違法だとされるようなこともあります。後で後ろ指差されないためにも、現行法で問題ないからというサイエンス的な考えではなく、倫理的・規範的に大丈夫かを判断する必要が出てくるのです。

 

3.自己実現欲求市場の登場

新しい機能が世に出てきた時にはその機能の利便性で勝負できるが、それがコモディティ化(一般化)し、成熟してくると機能ではなく何がその人にとって美しいか、気持ちいいかという美的感覚が売れゆきに影響してきます。

こうした状況でサイエンスを重視すると、どれだけイノベーション(技術革新)を重ねても模倣されてしまいます。自分たちで自ら創り出したストーリーや世界観を伝えるといった、コピー不可能なブランド競争力が重要です。

 

2. 美意識を持つことの重要性


3つの理由から直感や倫理観、審美眼といった「美意識」を持つことが重要だと山口さんは言います。
それは他者や外部にではなく、内部に持つ自分の評価軸のことです。ただし、ただ直感を大事にするあまりにアートが偉いんだと非論理的になるのはNG。サイエンスもアートもどちらも大事です。

非論理的ではなく、超論理的なのがアート的な思考。

では、なぜ世の中的にはサイエンスが重視されているでしょうか。それはデータや数値で、意思決定の理由を後から説明できるからです。この説明責任を重視するあまり、リーダーは責任を逃れるためにも合理的な説明ができるものを過度に求めるようになり、逆に責任を放棄する方向に力が働きがちになります。アートとサイエンス、両者の主張がぶつかった時には必ずアートが敗北してしまうのです。

 

3. アートを取り入れる方法と美意識の鍛え方



ではどうすればビジネスにアートを取り入れられるのか。その方法は、大きく以下の2つです。

1.経営トップがアートを担う

計画を立てる人がアート的なビジョンを描き、クラフト的に実行する人やサイエンス的に定量的に測る人がそれを下支える。アートありきで物事を考える。

2.デザイナー等に権限を移譲する。

説明責任で弱いアートに力を与えることで、アートとクラフト、サイエンスの力関係が均衡させることができる。

 

アートを取り入れる方法が分かっても、実践に当たってそれを他人に理解してもらうには自らの美意識を鍛え、自信を持って説明できないと説得力ないですよね?

美意識を鍛えるためのキーワードとして本書では、以下の4つがあげれられています。

  • 絵画・・・鑑賞により観察し気づく力を養い、固定観念からの脱却できる。
  • 哲学・・・それが生み出されるに至ったプロセスや思考の流れを学ぶことができる。
  • 文学・・・作者の表現に対して、自分が何に共鳴するのかを感じ考えることができる。
  • ・・・少ない情報でいかに豊かに表現するか学ぶことができ、言語化する力のトレーニングになる。

 

難しい説明が続いてしまいましたが、感覚や表現方法を鍛えて“個性を爆発させろ”ということです。ただ個性を出せと言われてもアレルギーを起こすのが日本人なので、“理想的で優秀なイメージのある“エリート”は“美意識”を鍛えているよ。あなたはどうする?”というやや挑発的なタイトルを付けることで、読者の興味を誘っているのです。

好きなラーメン屋を上げろと言われたら独自の目線でいくつも言えるのに、芸術などの権威のある分野になると“正解”があると思え、不正解を恐れて自分の思った通りの答えではなく、世間的な正解を選ぼうと必死になってしまうのが日本人の典型です。

年末の芸能人格付けチェックなんかがそのいい例で、安いものでも本人がいいと思えばそれが本人の正解であるはずなのに、違い分からないことは恥ずかしいことであると洗脳されています。もちろん、感覚を磨いて違いが分かることも大切ですが、それ以上になぜそれがいいと思えたのか自分の言葉で表現できることの方がもっと大切なのです。

 

 

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