『歴史思考』要約(メタ認知能力を鍛える、過去から未来を読み解く思考法とは?)【深井龍之介】

books in glass bookcase 時代を生き抜く考え方・哲学

 

自分にはどんな役割があるのか、どう生きれば自分も周りの人もハッピーになれるのか、といった漠然とした悩みを抱えていませんか?

この記事では、深井龍之介さんの書籍「歴史思考」を紹介します。

望みや願いを叶えたい、成功したいと思って努力しても、なかなかうまくいかない。私の人生はいつも悩み事ばっかりで、なんだか苦しい…と思っている方。

今回紹介する“歴史思考”を知れば、悩みから解放された人生へとシフトすることができます。

 

例えば、不景気で給料が上がらない、LGBTQに困っているといった悩みは、現代社会における常識から来る悩みであり、思い込みであるとも言えます。

歴史を知り、長い時間軸で客観的な視点で見てみると、これら悩みの根源は、私たちが生きている社会の価値観から生まれた無数の当たり前によって生まれていると分かります。

著者の深井さんは、“歴史を知ることであなたを苦しめている悩みを吹き飛ばすために書きました”と、本書の冒頭で語っています。

悩みの根源を吹き飛ばす方法は、歴史を知り、メタ認知を高めることです。

どういうことか、さっそく中身をみていきましょう!

 

1. キリストは30歳まで平凡な大工だった

Jesus Christ

 

世界史を代表する偉人であり、後世への影響力は史上最強のイエス・キリストは、30歳くらいまでただの大工だったそうです。当時の大工の社会的地位は、奴隷の一つ上くらい。

どこにでもいる平凡なユダヤ人の一人だったイエスは、ある日大工を辞めてヨハネという人物に弟子入りしました。ヨハネの元で学びながら、少しずつ信頼を獲得していき、少しだけ弟子を持つようになったイエスは、出身地に近い場所でユダヤ教の新説を唱え始めます。

しかし、それにより当時ユダヤ人を支配していたローマ帝国の偉い人に目をつけられ、弟子の一人に裏切られ捕まり、政治犯として処刑されてしまいます。

その間、自分の考えを広める活動をしていた期間はたったの3年と、実はとても短かかったのです。そんなイエスの教えが、なぜこれほどまでに世界中に広まっているのか不思議ですよね。

 

どうしようもない弟子たち

著者は、資料が新しく研究者によっても意見の違いがあるものの、イエスの生涯を誤解を恐れず一言で表現するなら、“弟子に裏切られて処刑された元大工の政治犯”だと言います。

現在、地球の総人口の約33%がキリスト教信者で、世界最大の宗教グループと言われるまでに広まっている教祖も、歴史を冷静に見つめると全く異人という感じがしません。

イエスの弟子たちも12使徒といえば聞こえばいいけれど、弟子が12人しかいなかったとも言えます。1,000人以上の弟子がいたゴータマ・シッダールタ(ブッダ)とは雲泥の差があります。

しかも、最後はたった12人の弟子の中の1人、ユダに裏切られ、情けないことにユダがローマ帝国から受け取った対価は、銀貨たった30枚でした。

 

イエスが生きている間にその活動が世界中に広がったわけでもなく、当時のローマ人の感覚でいうところの地方都市で活動をしていたに過ぎません。

そもそも、イエスに関する資料がほとんど残っていないということが、当時、彼がそこまで有名ではなかったことを物語っています。

ではなぜ、彼の死後2,000年以上が経った現在、名前を知らない人がいないほどに広まったのでしょうか。

 

キリスト教はたまたま広まった

キリスト教が広まった理由を端的に言えば、“たまたま”。

歴史はものすごく複雑で、遠い将来何がどうなるかを予測して動ける人なんてまずいません。

田舎の政治犯だったイエスが、当時の世界的な帝国、ローマの皇帝をはるかに上回る影響を後世に残したことは、当時の人間は誰も予想していなかったはずです。

つまり、人間の評価を短期的なスパンで比べることにあまり意味はなく、今この瞬間だけを切り取って人間を評価するのは危険なことだということが分かります。そして、これは私たち自身への評価にも言えます。

 

歴史を基にしたメタ認知

私たちは長くても、100年くらいしか生きられません。100年なんて、人類誕生後500万年の歴史から見れば、ほんの一瞬の出来事です。

その中の今この瞬間の自己評価で、自分を卑下したり傷つけたりするのはやめた方がいいのではないでしょうか。

これが、冒頭でいうところの歴史を基にしたメタ認知です。私たちは目の前の世界に没入してしまいがちですが、一度冷静になって一歩引いて客観的に物事を見てみること。

著者の深井さんは、歴史や古典を知ることで、メタ認知を高めることができるという思いで本書を書いたり、世界史のデータベースを作る活動をしたりしています。

 

2. 人生のクライマックスは30年後

KFC fries and chicken lot

 

今や世界145カ国以上、約2万5,000店を展開するグローバルブランドであるケンタッキーフライドチキン。日本にも1,000店舗以上あり、知らない人はほとんどいません。

そんなケンタッキー、実は創業者のカーネル・サンダースが65歳の時に、フライドチキンの店舗販売事業に失敗し、全財産を失ったことをきっかけに全世界に広まりました。

なぜ事業に失敗したのに広まるのか気になりますよね。

 

その理由は、サンダースが料理が天職であり、フライドチキンにたどり着いたきっかけが、幼少期の頃の原体験にあったと思い出したことだそうです。

本書では、何度も仕事を変え、事業を起こしては失敗し苦労した過去や、フライドチキンで成功するきっかけとなった娘さんの一言など多くのストーリーが書かれています。

ここではその中から、60歳を超えても苦難の連続が続き、それを乗り越えて大成功を収めたサンダースの歴史に絞って解説していきます。

 

最高のフライドチキン

第2次世界大戦後のアメリカでは、高速道路の建設が盛んになり、サンダースの始めたフライドチキンのお店の前を通る車の多くは高速道路に流れてしまい、売上は全盛期の半分以下に。

65歳にして全財産を失います。

しかも、真面目に払ってきた年金の支給額は、家族が暮らしていけないほど微々たるもの。

追い込まれたサンダースは考えに考えた末、自分が持っている最強の武器に気づきます。

「そうだ、自分にはフライドチキンがあるじゃないか。最高のフライドチキンの作り方を知っているじゃないか。」

もう一度、店舗を始める体力もお金もないと判断したサンダースは、そのレシピを売ることを思いつきます。

店舗経営の才能のなかったサンダースですが、味には絶対の自身があったのです。

 

1000回の門前払い

そこから彼は、レストラン経営者の友人の家に押しかけ、その場で無理やりフライドチキンを作り、食べさせます。

出来上がりまで何時間も待たされてイライラしていた友人とその家族は、フライドチキンを一口食べて大感激。友人はサンダースと、チキンを1ピース売るたびに4セント払うという契約を交わします。

こうして、ケンタッキーフライドチキンのフランチャイズ1号店がオープンしました。

この経験で自信をつけたサンダースは、中古車にチキンをあげるための圧力釜と秘伝のスパイスを積み、家族と一緒に車中泊をしながらレストラン巡りを開始。

当時フランチャイズなんて考え方はなく、今まで聞いたこともない形態に抵抗を感じる人は多く、サンダースは少なくとも1000回は門前払いを食らったと言います。

それでもめげることなく、諦めずに営業を続け、最初の1年こそ7店としか契約できなかったですが、翌年から爆発的にフランチャイズが拡大し、あっという間に数百店舗までの規模に膨れ上がります。

このビジネスが大当たりし、全米の店舗数が600店を超えたとき、サンダースは74歳になっていました。

若き実業家に権利を売り、一線から退きますが、その後も走ることをやめなかったサンダース。

日本を含む世界中の店舗を飛び回り、自分のレシピがちゃんと守られているかを確認して回ったそうです。

1980年、サンダースは90歳でその生涯を終えました。

 

歴史の異人の多くは遅咲き

このエピソードから著者は、30代や40代くらいで成功した、失敗したというのは不毛だと言います。

サンダースは、幼少期の経験と社会に出てから味わった苦い経験が集約した結果、フライドチキンのお店でそれなりの規模の売り上げを立てるという1つの成功を一度は収めましたが、それで終わりませんでした。

いや、終わらせてくれなかったと言えるのかもしれません。とにかく70歳近い年齢から再スタートを切り、70代半ばで大きな成功を収めました。人生どうなるかなんて分からない。

 

サンダースに限らず、本書で紹介されているガンディや孔子、桓武天皇、伊能忠敬、ヘンリー・フォード、ネルソン・マンデラなどの人たちの多くは、遅咲きだったそうです。

なぜ偉人は遅咲きが多いのか。理由の一つは、年を取るほどどんどん可能性が広がり、加速していくからではないかと著者は言います。

若いうちに絶望したり有頂天になったりするのはやめて、クライマックスはあと30年くらい先だと思い定め、今目の前で起こることに向き合い一生懸命に取り組んでおいた方が良さそうです。

 

3. 人間の悩みは2500年前に考え尽くされていた

 

約2,500年前に究極のメタ認知をした人物、それは仏教を開いたゴータマ・シッダールタ。いわゆるブッダ、お釈迦様です。

彼は、“私の境界はどこにあるのか”という疑問から、「この世の物事はすべてが移ろうのだから、確実に存在するように思える私でさえ絶対ではない。様々な物事との関係によって、今ここに存在しているように感じられているだけだ。」という考えに至ります。

ゴータマは、私という存在を徹底的に追求した結果、私を規定するのは難しいという結論に達してしますが、その悟りを開くに至る思考のプロセスはとても科学的でした。

 

どこからどこまでが私か

彼が解明したことを、現代の科学の言葉に置き換えてみましょう。人間の体の大部分を構成している水分量は常に一定に保たれていますが、実はその中身はどんどん入れ替わっている。

水分そのものは汗や排泄物として出て行って、水蒸気となって大気中を漂ったり、川や海に吸収されたり、もしかしたら他の動物や別の人間の体に入り込んでいるかもしれません。

もしそうだとすると、あなたのパートナーや子供の体を構成していた水分が入ってきて構成されているあなたの体を、あなたは「これは私の体だ!」とはっきり言えるのでしょうか。それとも別の人間ということになるのでしょうか。

 

わたしは恣意的に決められた存在

水分だけではなく、あなたの体を構成しているおよそ37兆個の細胞も、毎日少しずつ入れ替わっています。

もっとミクロな量子のレベルで言えば、私たちは原子で構成されており、その原子は素粒子で合成されているので、人間は素粒子で構成されていると言えます。

そして、他人と触れ合う時、他人を構成する素粒子とあなたを構成する素粒子が、行き交うことがあるということもわかっているそうです。

素粒子に限らず、人間と共存している細菌なども行き交っています。

どこからどこまでが私で、どこからどこまでが他人なのかもうわかりません。

ゴータマは、どこからどこまでが私であるかは、我々が恣意的に決めているだけであって、実際にそのように存在しているのではないという結論に科学的で解明される前にたどり着いたのです。

 

ゴータマはなぜ悟りを開けたのか

ゴータマはなぜ悟りを開けたのか。もともと王宮の中で生まれた王子だった彼は、何不自由な裕福な暮らしを捨てて出家します。

その理由は外の世界には老人や病人や死者がいて苦しみに満ちていることを知ってしまったから。苦しみを目の当たりにしたゴータマは、苦しみとは、自分の願ったことがその通りにならないこと。

コントロールできないものをコントロールできると思い込むことで、執着が生まれ苦しみが生まれると考えました。

そんな苦しみから人々を救うために出家し、修行をして悟りを開いたゴータマがたどり着いたのが、“私は存在しない”という結論です。

悩んでいる人は、例外なく悩んでいる私と、私を悩ませる他者、人間関係や社会を前提にしています。

そのため、私という存在はないという結論になると、悩みようがないということになります。

 

究極のメタ認知

この考え方は、言っていることは理解できるけど、ちょっとぶっ飛びすぎていて腹落ちするのは難しいですよね。

著者の深井さんは、結論だけ見ればぶっ飛んでいるが、この論理を一つ一つチェックしても、どこにも隙がないと言います。

ゴータマの教えは、腹落ちすれば一瞬で特定の価値観から自由になれるくらいのパワーを持つ、究極のメタ認知なのです。ただし、ここまで到達するのはなかなかにハードルが高そうです。

ここまでの解説で見てきた通り、歴史や古典などで得た教養によって、特定の価値観や考え方から自由になることができ、メタ認知が高まります。

その究極形態がブッダの悟りであり、メタ認知ができるようになると悩みから解放されるだけではなく、異なる価値観や立場の人を理解しやすくなり、私の範囲が広がっていきます。

これを繰り返してどんどんメタ認知を高めていくと、“私なんて存在しない”という境地に行けるかもしれません。

 

本書、深井龍之介さんの「歴史思考」は、学校の授業のような歴史とは全く異なり、性・お金・命に関する現代と昔の価値観の大きな違いなどの内容が目白押しです。

歴史が苦手という人にこそぜひ読んでほしい1冊。興味のある方は、ぜひ手にとってみてください!

著者深井さんがPodcastで配信している「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」もおすすめです。

 

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