この記事では、イ・ミンギュさんの書籍「後回しにしない技術 ~すぐやる人になる20の方法~」という本を紹介します。本書は、
- 将来への不安を解消したい
- 理想の自分に近づきたい
- 自分の人生を自らの手でよくしたい
という方にオススメです。これらの目標に対してやるべきことは分かっていても、つい後回しにしてしまっていませんか?
また、子供のころ周りから秀才と呼ばれても、大人になると普通に生きる人が多いように、
- 勉強をたくさんしても、結果として周りと変わらない
- 優れた企画力がありながら、成果を出せない
といったことは、たくさんあります。なぜ、努力する才能やアイデアがあっても、成果につながらないのでしょうか? 以下、本書の引用です。
平凡な人と成功した人との違いは、知識ではなく実践にあり、成功した企業とそうでない企業の違いは、戦略ではなく実行力にある。
個人であれ組織であれ、実行力こそが真の競争力なのだ。
No Action, No Change
ーーイ・ミンギュ
つまり成果は、持ち合わせた力量を発揮できるかどうかの “実行力” で決まるということです。実行しなければ、何も成し遂げることはできない。具体的にどうすればいいのか、詳しく内容をみていきましょう!
1. 実行力とは何か
スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツが偉大なのは、彼らの知識やアイディアがずば抜けていたからではありません。彼らが行動を実行に移したからです。同じ能力を持ち、同じことを願っている人でも結果が千差万別なのは、成果が力量と実行力を掛け合わせた値で決まるからです。
「成果 = 力量 × 実行力」
ということです。ここでいう力量とは、
- 才能
- 知識
- 創造的なアイディア
- 組織の企画力
- 革新的な戦略
なども含みます。才能・知識・アイディアがいくら優れていても、実行力がゼロだと成果もゼロです。では、実行力とは具体的にどんなことを意味するのでしょうか?
多くの人は、実行力は意志の力であり、生まれつきの資質だと思っていませんか? 決心したことを三日坊主で諦めてしまったときは、自分を意志が弱い人間だと責めてしまいますよね。しかし著者は、それは誤った考えだと言います。
実行力は生まれつきの資質ではなく、学んで練習すれば誰でも開発することができる技術です。いつまでたっても行動に移せないのは、まだ効果的な方法を学んでいないから。車の運転ができないのは、学んで練習していないからであるのと同じように、実行力も実戦のノウハウを学んで練習すれば習得できるということです。そう言われえると、今までできていなかった実行することへのハードルが、少し下がった気がしませんか?
2. 実行し続けるための3つのキーワード
実行し続けられる人になるためには、
- 成功のイメージ
- プロセスの視覚化
- 両面的思考
の3つのキーワードがあります。先ほど実行力とは一種の技術であり、学びと練習で身に付けるものだという話をしました。では、これら3つのキーワードから、実行し続けられる人の特徴・技術とはどんなものなのか? 1つずつ詳しくみてきましょう!
「切実に願えば叶う」、「いきいきとイメージすれば、夢が現実に変わる」といった考えは、自己啓発本でもよく強調されることです。しかし、目標をイメージするだけでは失敗します。むしろ目標を達成する上では、かえって邪魔になるとすらあります。願うだけで目標が達成できるのなら、今頃世界中の人々の願いが全て叶っているはずですよね。
3. 成功をイメージすると結果が付いてくる?
ここからは、成功をイメージすることの効果を、実証実験をもとに紹介します。心理学者のリエン・ファム氏は、ある大学生のグループに中間テストで、
- 高い点数を取った場面を、毎日いきいきとイメージするグループ
- そうでないグループ
に分け、実際の中間テストの点数を比べました。
その結果、高い点数を取ったのはイメージをしなかった学生たちでした。イメージした学生たちは、返って勉強時間が少なく、成績も低かったそうです。2002年にノーベル経済学賞を受賞した、プリンストン大学のダニエル・カーネマン名誉教授はこの理由を、「自信過剰になって計画を膨らませすぎた結果、計画誤審を起こしたのだ。」と、説明しています(カーネマン教授については、以前に「ファスト&スロー」という意思決定に関する書籍の紹介をしました)。
4. 困難を予想すると踏み止まりやすい
もう1つ、事例を紹介します。ニューヨーク大学のガブリエレ・エッティンゲン教授は、ダイエットプログラムに参加した女性たちを対象に、
- 食欲をコントロールできると信じるプラスのイメージグループ
- そう思わないマイナスのイメージグループ
に分けて比較しました。
そして、1年間にわたり追跡した結果、マイナスのイメージを持ったグループの方が、プラスのイメージをしたグループよりも、平均して12kgも体重が減ったことが分かりました。なぜ、このような結果になるのでしょう?計画を誤ったのでしょうか?
ここで考えられる理由としては、楽観的な考えを持ちつつ目標達成までの困難を予想すると、返って実践することを踏み止まってしまうからだとされています。道のりが険しければ険しいほど、想像するだけで実践する前に諦めてしまいますよね?
また、バラ色の未来をイメージしてばかりいる人たちは、成功を手にする前に楽観したイメージとのギャップで簡単に挫折してしまい、イメージの中に逃げ込む可能性が高くなるということです。一方で、願いを叶えたければ、それを心の中でイメージするという話は、正しい面もあります。イメージすらできなければ挑戦することもできず、挑戦できなければ決して成功しないからです。
5. プロセスを視覚化し、プランBやCを用意する
ここからは2つ目のキーワード、プロセスの視覚化を解説します。頭に描いたイメージを実現させるためには、
- 成功への道を探し出すこと
- その過程でどんな障害にぶつかるかを予想し、克服方法を知っておくこと
が必要となります。心理学者のチャールズ・リチャード・シュナイダーは、大学生・スポーツ選手・一般人を対象にした実験と研究を通じて、「達成レベルの高い人ほど、“自分は目標達成のための具体的な方法を探し出せる!”という信念を持ち、実践する傾向が強い。」と結論づけています。
また、成功へのルートを探し出せると信じる人たちには、次のような特徴があるそうです。
- 目標水準をより高くおく
- 失敗しても簡単にあきらめない
- 目標を達成するためのさまざまな方法を探し出す
成功するにはただ自信があって粘り強いだけでなく、1つのルートがダメであった時のことを想定して、前に進むための別のルート(プランBやC)を見つけておくことが重要だということですね。
6. 両面的思考はホット&クール?
最後に3つ目のキーワード、両面的思考について。目標を達成するためには、2つの動機づけ(モチベーション)が必要だそうです。それは、スタートモチベーションと持続モチベーションです。スタートモチベーションは、目標を達成した状態をイメージすること。ゴールの視覚化によって作られます。
もう一つの持続モチベーションは、目標達成へのルートプロセスの視覚化によって作られます。いくら目標を達成した状態をイメージしても、プロセスの視覚化ができない限り、実践を持続させることはできず、目標達成ができないということです。
つまり、願いさえすれば何でも手に入るという安易な考えよりも、成功に結びつくルートを探し出し、その過程でぶつかる問題を予想しながら対策を立てることのほうが、より重要だということです。そして、実行力に優れた人たちは、楽観的な思考と悲観的な思考を同時に持つことができるそうです。これが、両面的思考です。
そんな冷静と情熱のあいだみたいな思考、常に持つことができるの? と思いますよね。この本では、両面的思考を育てるために必要なプロセスについても、簡単に解説します。両面的思考を育てるためのプロセスとしては、
- 望みを手に入れた自分の姿を生き生きとイメージし、そこからどのようなメリットが得られるかを最大限に探し出す
- 目標達成のプロセスでぶつかる難問や、突発的な事態を予想する
- それらの問題に効果的に対処できる対策を立てる
の3ステップが、両面的思考を育むためのステップです。これらについては、目標を設定する際に一度書き出してみるのもいいかもしれませんね。
7. 実行し続けるための具体的な方法
最後に、本書で紹介されている実行し続けるための具体的な方法を紹介します。この記事で取り上げる方法は、
- 他人のよい習慣をまねる
- 「キャリアロードマップ」をつくる
- どんな時も「代案」を用意する
の3つです。それぞれ掘り下げてみていきましょう。
他人の良い習慣をまねる
世界最高のお金持ち、ビル・ゲイツは、成功へのコツを “他の人の良い習慣をまねること” だと言います。また、同様に世界でトップクラスのお金持ち、投資家のウォーレン・バフェットも、お金持ちになるコツについて同じことを言っています。
他人の良い習慣をまねることを「ベンチマーキング」と言い、これは企業経営のみならず、個人にも必要なものになります。望むものを手に入れたければ、すでにそれを持っている人たちの習慣を研究し、それをまねるのが一番の近道だということです。
「キャリアロードマップ」をつくる
著者は、目標を達成するための自分だけの「キャリアロードマップ」を作ってみてほしいと言っています。
まず、実現したい夢や目標を思い浮かべ、今いる位置(スタートライン)から望みの場所(ゴール)までの道筋を心の中に思い描きます。次に、目標とそれを達成する時期と年齢、締め切りを書き入れます。そしてゴールからさかのぼりながら、必ず通らなくてはならない中間目標と、スタートラインに対してその時期に達成しているべきことと、その年度・年齢を記入します。これを書き終えたら、
- 目標達成の方法
- 予想される問題
- 問題の解決策
を考えて、目標達成のために今すべきことを一つずつ見つけて、実行していきます。
ポイントは夢を実現した姿を、
- 具体的に「いつ・何を・どのように」とイメージする
- その夢を実現するための道筋を書き出してみる
- 夢の実現のために今すぐできることは何か1つ探してみる
といったことを基に作り上げることです。
また注意すべきことは、ロードマップを完璧に作ろうとしないこと。完璧にしようとすると、描こうという気持ちがしぼんでしまいやすくなります。ロードマップをつくるのは、目的意識をもって生きるためであり、必ずしもロードマップ通りに生きるためのものではありません。またその通りにならないのが人生です。
どんな時も「代案」を用意する
どんなに準備をしても、到底予想できない事態というものは起こります。いくら立派な目標を掲げ、素晴らしい計画を立てても、突発的なトラブルは私たちの意思をくじき、予想外のトラブルは起きるものです。繰り返しになりますが、そういったことに対処するには、常に代案を用意しておくことが大切です。
- 最高の経営者
- 勝利に導く将軍
- 偉大な政治家
彼らは、みなある意味で怖がりです。だからこそを実行中の仕事で想定しうる最悪の状況を予想し、これに対する代案を常に準備しています。偉大なリーダーほど、トラブルによって挫折することなく、常により多くのものを手に入れるための「プランB」を持ち合わせているものです。著者は、
実践しないために本を読み、実行しないために講義を聴く人があまりに多い。いくら多くの時間を投資して本を読み、いくら多くのことを感じたとしても、それを行動に移さなければ何の意味もない。
実行力は、目標を目にみえる成果へと導く結び目であり、自分の運命はあなたが実行するかどうかに関わっている。本書を読んで1,000のことを考えるより、ただひとつだけでも実行に移してくれることを、私は望んでいる。
と言います。イ・ミンギュさんの「後回しにしない技術 ~すぐやる人になる20の方法~」では、今回紹介した内容以外にも、紹介できていない部分が多いです。ためになったという方は、ぜひ手にとって読んでみてください!