この記事では、大人気歴史学者・ハラリさんの書籍「ホモ・デウス」を紹介します。ホモ・デウスとは、“ホモサピエンス = 人類” が “デウス = 神”になるという意味です。
「私たちが神に? そんな訳ないでしょ。」と思いますよね。何も、”人類がみな神になる”という訳ではありません。
結論から言うと、ごく一部の人間が実質神的存在になるそうです。「サピエンス全史」では、人類が生き残ったのは優秀だからではなく、“嘘 = フィクション”を作ることができたから、という衝撃の事実を教えてくれたハラリさん。この本でも、納得の未来予想を示してくれます。それでは、一緒にみてきましょう!
1. 人類の未来は楽園か地獄か
現代が医療・AI・ロボット工学といったテクノロジーが爆発的に発展していく世の中であることは、「2030年」や「2040年」といった本の記事でも紹介しました。そんな世の中は、私たちにとって楽園か、それとも地獄か。
「ますます便利になるし、楽園でしょ?」と思いますよね。ところが、別の側面もあるようです。それを知る前に、まずは人類にとって神がどんな存在であったかを振り返ります。
それぞれの時代の神
狩猟をしていた石器時代、私たちはアニミズムと呼ばれる万物に魂が宿り、そこに神がいるという教えを持っていました。“何でもかんでも神”という時代です。
そこから時は流れ、中世なると神に対する考え方は変わり、“有心論宗教主義”になります。これは簡単に言えば、キリストなど特定の神様が存在して、その神様が至高の存在という考えです。この時代になると、神様と人間の間に明確な身分の違いが生まれました。また、人間と家畜の間に身分の違いが生まれたのもこの頃です。
石器時代では、牛でも豚でもみんなに魂があって対等な存在であったのに、いつしか動物は家畜として人間に生かされて管理するものという認識が広がっていきます。
現代は人間至上主義
そして現代になり、状況はさらに変わっていきます。サピエンス全史を読んだ方はお分かりかと思いますが、科学技術が急速に発展します。今まで神様の力としていた現象が科学の力で解明され、人間の手で再現できるようになったのです。
われわれ人類は、今まで天高く見上げていた神様の席に、自ら座りだしたのです。そして「神様なんて存在しないし、自分の欲望を満たすことが最優先だよね。」という考えに至ります。この“人間至上主義”と呼ばれる時代に突入したところまでは、「サピエンス全史」にも書かれていましたね。問題はここからです。
2. 人類には神の存在が必要、データが神になる
実は人間至上主義になり、科学の発展で何でも実現できる状態になったからこそ、”人類は究極の悩みを持つようになってしまった。”とハラリさんは提言します。
今後もテクノロジー発展すれば、人はサイボーグのような体で不老不死も実現できるし、脳みそに直接幸福成分を打ち込んで人工的に幸せを作ることだってできる。人類は無敵に近づいていく。
しかし、無敵に近づけば近づくほど、人を殺してはいけない、嘘をついてはいけないといった神の教えはもちろん、自分たち行動規範がなくなり、何をもって判断していいか分からなくなるといった皮肉的な事態に陥るそうです。
人類は結局、“あなたはこうしなさい”と言ってくれる神様を求めてしまうものです。確かに言われたことをやって、安全に生きられれば楽ですよね。では、その人類の拠り所とする“神様の椅子”に座るのは誰か、それは”データ”です。
データによって支配される世界
“人間至上主義”から“データ至上主義”の時代が来ると、ハラリさんは予言します。蓄積された大量のビッグデータが、「あなたはこうしなさい」と神様のように命令してくれる時代です。
「いや、データに命令されても、やるか決めるのは自分でしょ?」と思うかもしれませんが、すでに我々の生活にその予兆は見られます。
例えば、食べログ3.5以上のお店を探そうとしたり、GoogleMapで最短距離の道のりを進んだりと、合理的に失敗しないように行動するために、すでにデータを信じて始めているのです。また、Chat GPTといった対話型AIの発達も、目覚ましいです。
私たちは、データをまるで神様のように扱うようになる。ただ、これでは冒頭の結論、“人類が神様になる”とは少し意味が違う気がしますよね。
3. 人類が神であり、家畜になる世界
ここからは、さらにもう一歩踏み込んで、いよいよ人類が神になるお話です。結論を言うと、神になる人間は少数の選ばれた人類で、残りの人類は家畜になります。
「え〜、私たちが豚や牛のように扱われるの?」と思うかもしれませんが、さすがにそれはありません。
私たちの頂点に“ホモ・デウス”と呼ぶべき、神的存在になった少数の人間がいて、その人たちが世界の膨大なデータをアルゴリズムで管理し、その管理されたデータを元に大半の人が動かされるという構造のことを言っているのです。
大半の人類と家畜の線引きがなくなる
さらに、人間はAI・ロボットといった働くためのより優秀な存在の台頭で、人間の価値は失われていきます。すると、豚や牛といった家畜との線引きがどんどん薄れ、“家畜のような存在”になってしまうということです。
結果として、世界はこうあるべきだと設計図を作る“ホモ・デウス”だけが最先端の医療を受け、不老不死となって神様として君臨し続け、家畜を管理するという未来がやってくるのです。
こんな飛躍的なSF世界、まだまだ来ないと思えるかもしれません。しかし一方で、着実にその未来に向けて、時代は進んでいることを覚えておいてください。
今回は、圧倒的な天才・ハラリさんが人類の未来を予測した名著「ホモ・デウス」を紹介しました。より詳しく知りたい方は、ぜひ本書を手にとってみてください!