この記事では、鈴木祐さんの「最高の体調」という本を紹介します。本書では文明病という、多くの現代人が抱える謎の気だるさや不調などの原因について、科学的なエビデンスをもとに解説しています。朝起きるのが辛い、なんとなく体がだるい、集中力が続かない、イライラが収まらない、毎日が楽しくないといった症状は、文明病かもしれません。
もし1つでも当てはまるのであれば、ぜひ本書の解決策を取り入れていただきたいです。私たちの体は、太古の昔からそれほど変わっていないのに、ここ200年で社会は大きく変化しました。それが原因で起こる“文明病”と呼ばれる病を消し去ることで、私たちは本来の“最高の体調”を取り戻すことができるのです。具体的にどうすればよいのか、その中身を見ていきましょう!
<鈴木祐さんの書籍はこちらでまとめて紹介しています>
1. 文明病について
“文明病”とは、人間の体の進化が現代社会の発展に追いつけないことで起きる、病気や身体の不調のことです。例えば、肥満・不眠・うつ・不安などです。他にも、ガンや糖尿病などの現代特有の病や、原因不明の疲労感や倦怠感、無気力感なども当てはまります。
人類の歴史は、そのほとんどが狩猟採集の時代でした。誕生から約250万年もの間ずっと狩猟採集をして生きてきたのです。その後、農耕という技術革新が起こり、食料を蓄えて生活するようになったのは、つい最近の1万年前。
そこからさらに、科学技術を急速に発展させるきっかけとなった、産業革命が起こったのは、たったの250年前です。つまり、約250万年の狩猟採集時代、約1万年の農耕社会、約250年の現代的な社会といったように、人類の歴史の99%以上は狩猟採集の時代だったのです。
一方で、この200年くらいでテクノロジーの急激な発達によって、社会は激変しています。人口は爆増し、野山はアスファルトで覆い尽くされ、人々はひたすらスマホの画面に釘付け。街角にはファストフード店が立ち並び、安い値段で手軽にお腹いっぱいになることができます。さらには、仕事や人間関係のストレスに常にさらされる社会になりました。
この変化で大事な点は、私たちの体や脳は、数万年前の狩猟採集時代とほとんど変わっていなく、科学技術の発達のスピードに比べて、生物の進化のスピードというのは極めて遅くギャップがありすぎるということです。では、具体的には現代社会の何が悪くて、私たちは不調に陥ってしまうのか。
主な原因は、炎症と不安です。これらは、激変した現代社会における多すぎるカロリー、過度なストレス、少なすぎる運動や睡眠時間、少なすぎるビタミンや食物繊維の摂取などが原因で、私たちの体を蝕んでいます。
炎症と不安とはどういうものなのか、どう対策していくべきなのか、掘り下げてみていきましょう。
2. 炎症と7つの対策
まずは炎症についての説明と、その対策について解説します。炎症とは、体が何らかのダメージを受けたときに起きる人の細胞レベルでの火事のようなものです。それは、擦り傷といった体の表面に起きる現象のみならず、例えば、関節や風邪などの体の中で起こる不調も含みます。
何らかの原因で、細胞で火事が起きていれば、それは炎症なのです。炎症が身体の中で増えることにより、私たちは鬱や肥満、だるさといった文明病にかかってしまいます。狩猟採集時代と現代では環境が違いすぎるため、そのギャップで私たちの体では、炎症が起きやすくなっているのです。
逆に言えば、狩猟採集時代の生活に適度に近づけることができれば、炎症を防ぐことにつながります。その具体的には、以下の7つの方法があります。
腸内環境を整える
腸内環境がいいと、きちんと栄養を吸収できる体に有害な物質を倒せるといったメリットがあります。そのため、体の炎症を減らすことができます。現代社会では腸内環境を悪くする状況になっています。例えば汚れた空気、腸に悪い食事などです。
腸内環境を整えるためにすべきことは、空気をきれいにする、発酵食品を摂る、食物繊維を摂るの3つです。空気については部屋の換気に気を配った上で、空気清浄機も有効です。発酵食品については納豆・キムチ・味噌・チーズ・ヨーグルトなどがあります。
食物繊維については、野菜とフルーツを摂るのが有効です。中でも水溶性の食物繊維が豊富なごぼう・寒天・海藻・キノコ類・オクラ・りんごが腸内環境を整えるのに推奨されています。
運動をする
運動については、体の状態が良くなる、頭がよくなるといった効果を当ブログでも度々紹介してきましたが、さらに炎症も減ります。どのような運動をどれだけしたらいいかは、様々な書籍で色々な言われ方がしているので、自分に合ったやり方を見つけてみてください。
自然に触れる
自然に触れることでも、炎症が減ります。具体的には、海や森や川で遊んだり、緑豊かな公園を散歩したりするとったことで、毎日きちんと日光を浴びるなどが有効です。
日光浴については、セロトニンという超重要な脳内物質を分泌させますのでとても大事です。他にも観葉植物を部屋に置いたり、大自然の写真や動画、川の音や鳥のさえずりのBGMなどのデジタルの自然に触れても効果があることがわかっています。
良好な人間関係を築く
良好な人間関係を築けていることは、ダイエットや禁煙よりも健康増進の効果があることが分かっています。人間関係が薄く孤独なことはとても体に悪く、炎症を引き起こします。
この孤独による炎症は、体調を悪くしたり脳の機能を落としたりしてしまいます。私たちは狩猟採集時代は集団で生活していたし、集団で狩りや採集をして、子どもを育てできました。その名残から、良好な人間関係を持つことが体の調子にもつながるのです。
よく眠る
睡眠の質と量をしっかりと確保して体を整えることで、炎症を抑えることができます。睡眠には個人差がありますが、基本的に最低でも6時間できれば7~8時間摂るようにする。15分~20分程度の昼寝も回復効果が高く、有効です。また睡眠の質を上げるためには、日中に日光浴をしておくことなどが有効です。
デジタル断食
デジタル断食とは、その名の通りデジタルと関係を断つことです。特に有効なデジタル断食は、スマホの使用時間を減らすことです。スマホによって私たちは、気づかないうちに、ストレスを溜めていることが分かっています。
ハーバード大学の研究によるとスマホの使用時間が長いほど、不安を感じやすい、仕事のストレスが回復しにくくなることが分かっています。
なぜスマホが悪いのかというと、脳にとって刺激が強すぎるからです。スマホやSNSは情報量が多いことや、人を惹きつけるためのコンテンツなどで、脳に対してとても刺激が強く、簡単に興奮にさせます。
スマホを一切触らないというのは、無理な話かもしれませんが、触っていい時間を自分で決めるなど、自分なりに工夫して上手に付き合っていきましょう。
ストレスを減らす
過度や慢性的なストレスは、体を殺します。実際に世界で年間400万人が、激しいストレスが原因による心臓麻痺で、亡くなっているそうです。ストレスもまた体の炎症を起こし、体を蝕みます。
その対策としては、自分なりにストレス解消方法を持っておくことが大事です。特にちゃんと睡眠をとること、運動すること、良好な人間関係を持つ事が有効です。
ここまで紹介した7つの方法すべてを、今日からいきなり実践するのは難しいと思いますが、特に興味があるものを3つほど選んで試してみるのをお勧めします。
3. ぼんやりとした不安が体を蝕む
ここからは、文明病の2つ目の原因、不安について解説します。狩猟採集時代の人が感じていた不安と、今を生きる私たちが感じる不安では、大きな違いがあります。
古代の人の不安は今日の食糧は取れるかといったはっきりしたものであったのに対し、現代人の不安は、今の仕事でずっと食べていけるのか、家族を養っていけるのか、自分は将来何をやりたいのかといった未来に対するぼんやりとした不安です。
また、狩猟採集時代の人や現代でもアフリカの狩猟採集民は、食べる、寝る、子どもを育てるといったシンプルな生き方をしており、“未来”という概念がほとんどありません。
不安は体を戦闘モードにする
現代人にしかない未来に対するぼんやりとした不安は、記憶力が下がる、理性的な判断力が下がる、死期が早まるといった不安が不安を呼び、私たちの体を蝕みます。不安はなぜ、こんなにも体に悪いのでしょうか。それは、不安は体を戦闘モードにするからです。
狩猟採集時代では、不安とは獲物に襲われたときに発動するものでした。私たちの先祖はこの獲物と戦うか、それとも逃げるかという判断に迫られ、生き延びるためには火事場の馬鹿力のような全力を出す必要があります。
そのため、人の体は不安を感じると、交感神経が優位になってからだが戦闘モードに入るのです。これが本来的な不安の機能です。
現代を生きる私たちが常にぼんやりと不安を抱えているということは、常に体がなんとなく戦闘モードになってしまっていて、体をきちんと休められていない状態です。そのため、先に挙げたようなたくさんの悪影響を体に及ぼします。
このぼんやりとした不安に対してどうすればよいのか、対策を3つ紹介します。
価値観をはっきりさせる
自分の人生において重要なものをはっきりさせると、将来に対する不安が減ります。狩猟採集時代の人は生きる・産む・育てるというように、価値観がはっきりしていました。それに対して現代人は価値観がとてもたくさんあります。
お金持ちになる、名誉を手に入れる、有名企業で働く、幸せな家庭を築く、自分の好きなことで生きていくなど、現代において人生の価値観は多様化しています。逆に、人生において何を大事にすべきかが見えにくくなっています。
そのため、様々な価値観がある中で、自分は人生で何を大事にすべきかはっきりさせることは、誰もが抱えるぼんやりとした不安を減らし、健康につながります。実際、ロチェスター大学の研究によると価値観を持って生きていると答えた人は、14年後の死亡率が15%も低かったそうです。
価値観が明確な人ほど、自然と健康的な食事と運動を実践しており、人生を充実させているといったことが考えられます。価値観を明確にすることは、とてもメリットが多いです。
では、どうすれば価値観を明確にすることができるでしょうか。確立されている方法としては、価値評定スケールとパーソナルプロジェクト分析があります。
これらの方法は、実際に臨床現場で使われている科学的に正当性の高い価値観を見つけ出す方法です。ここでは具体的に紹介しきれないので、ぜひ本書を手にとって、実際にやってみてください。
マインドフルネスになる
マインドフルネスとは、今ここに集中すること。過去にも未来にもとらわれずに、今この瞬間だけに意識を向けている状態のことを言います。
これには、たくさんのメリットがあります。脳が疲れず楽になる、頭が良くなる、集中力記憶力が上がる、メンタルが安定する、ストレス耐性がつく、免疫力が上がる、幸福度が上がる、ポジティブになる、共感力コミュニケーション能力が上がる、といった効果が盛りだくさんです。
有名な導入方法としては、瞑想があります。座って目を瞑り、自分の呼吸だけに意識を向ける。詳しくは、以前こちらの記事で解説していますので、合わせてご覧ください。
また、マインドフルネスの導入方法は、瞑想だけではありません。例えば、食器を洗う、洗濯ものを畳む、散歩をするというような日常の行動でも、今この瞬間に集中すれば、それは立派なマインドフルネスです。
余計なことは何も考えずに、ただひたすら丁寧に目の前の動作だけに没頭することが、マインドフルネスにつながるのです。
畏敬の念を抱くこと
畏敬の念を抱くとは、崇高なものや偉大な人を畏れ敬うことです。これにより、ストレスや不安を軽減させることが分かっています。ある研究によると、畏敬の念を抱かせやすいものとして、自然、アート、人の3つがあります。
自然については、山、海、川はもちろん、宇宙論や数学の美しさなども含まれるそうです。
アートについては、音楽・絵画・映画・演劇などがありますが、他にも巨大ダムとか巨大スタジオのような建造物世界遺産や、人類の偉業を示すものなども含まれます。
人については、歴史上の偉人やスポーツ選手、タレント、政治家、カリスマ性を備えた人物などです。人によって、どれに最も畏敬の念を抱きやすいかは個人差がありそうなので、何に心が動くのかいろいろ試してみましょう。
以上、鈴木祐さんの「最高の体調」について今回紹介できていない知識がまだまだたくさんあるので、興味のある方はぜひ手にとってみてください!