みなさんは、日々考えていることを整理できていますか?
この記事では、そのヒントとなる書籍「思考の整理学」を紹介します。本書は「東大・京大で一番読まれた本」 というキャッチコピーで知られており、時代に関係なく考えるということの本質について追求した内容になっています。1986年に発行され、これまで255万部を発行。発売してから30年以上も売れ続けている、超ロングセラー本です。
著者の外山滋比古さんは、お茶の水女子大学の名誉教授であり、専門の英文学をはじめ、教育論・ジャーナリズム論など、広い範囲の分野を研究した思考についての専門家。これまでの学校教育は偏差値至上主義が支配し、知識を詰め込むだけの退屈な教育だと言います。
先生と教科書に引っ張られ、受動的に知識を得るだけの教育は、まるでグライダー人間の訓練所のようだと。いくらグライダー能力が高くても、自力で飛び上がる飛行機の訓練を受けていないため、自分で物事を考えるとなると、途端にどうしていいかわからなくなってしまうのです。
コンピューターという人間以上に優秀なグライダー能力の持ち主が現れたことで、自分で飛べない人間はコンピューターに仕事を奪われてしまうということを外山さんは30年以上前にすでに予見していました。今回は外山さんが薦める、自分でアイデアを生み出すための3つのポイントを解説していきます。
1. 考えを寝かせる
1つ目のポイントは、どうしても解けない問題はいったん寝かせて時間をおいてから考えるということです。
一晩寝て考えると、難しいと思っていた問題が簡単に解けたりすることがありますよね。特に朝は「朝飯前」という言葉があるように、1日で最高の時間帯と言われています。これは、朝が適度な空腹状態で血糖値も高くなく、1日で最も頭がスッキリしている時間帯であるからです。
「見つめる鍋は煮えない」 ということわざがあります(待っている時間は非常に長く感じられるということのたとえ)。しばらく忘れるくらいが、ちょうどいいという意味です。しかしこれをやっていると、本当に忘れてアイデアがどこかに行ってしまいそうで心配ですね。そこで、次のポイントです。
2. メモに書き出す
学校の教育では人間の頭を倉庫に見立てて教育をしてきましたが、新しいことを考え出すには工場にならなければいけません。考える素材となる情報は必要になりますが、それだけで脳をいっぱいにしているとスペースがいっぱいになってしまい、素材を加工する余裕がありません。
覚えることはメモに任せて、頭の中には思考するための場所を確保するべきなのです。メモを取ったけれど、後から見返すとあまり大した内容ではなかったと思うことはありませんか?
その逆に、後から見返した時に大きな発見があることもあります。このようにメモを取るという行為には、アイデアをフィルタリングして本当に大切な情報をすくい上げるという効果があります。
3. 異分野の人と話す
3つ目のポイントは、積極的に外に出て専門分野が異なる人と触れ合うことが、アイデアを生み出すために重要だということです。
部屋にこもって机に向かっている人の方が、一見いい論文を書きそうではありますが、実際は外によく出ている人のほうが優れたものを書くと外山さんは言います。これは何か一つのことだけを考えていると思考の自由な働きを妨げてしまい、創造性を失ってしまうためです。
また、関心の中心にある問題よりも周辺にある問題の方が活発に脳が働くため、中心部にある問題をあえて周辺に移すことで 解決しやすくなるということも理由になります。
今回は 「思考の整理学」の中から、アイデアを生み出すための3つのポイントについて、すごく簡単に解説しました。アイデアをいったん寝かせることや とにかく書き出すということの有効性は以前に紹介をした、「アイデアのつくり方」でも語られている方法論とも共通します。
AIの進化に伴い、今後ますます自分自身の頭で考えることの重要性は高まっていきます。「思考の整理学」は、30年以上経った今なお通用する普遍的な考え方が綴られているので、興味を持った方はぜひ実際に読んでみてください!