この「ロングゲーム」で私が目指したのは、成功へのプロセスを全て明かすことだ。
長期にわたる成功を達成するまでには、どんなことが待ち受けているのか。
その現実を包み隠さず明らかにしたい。
人生という長いゲームを、攻略したいと思いませんか?
この記事では、ドリー・クラークさんの書籍「ロングゲーム いま自分にとっていちばん意味のあることをするために」を紹介します。本書は、
- キャリアの転機にいる
- お金だけではない本物の成功を手に入れたい
という方におすすめです。
著者はスインカーズ50という2年に一度選ばれる世界の経営思想家トップ50人に、2019,2020年の2回連続で選ばれています。本書では、人生を“ロングゲーム”として、目先の仕事で忙しいだけでは何も手に入らない。世界有数の企業のように、私たち個人にも長期戦略が重要だということを言っています。
著者自身の経験や、何百人ものトップクラスの企業の上級管理職や企業家たちをコーチングした経験から学んだことが紹介されており、ロングゲームのコンセプトと戦略の立て方が学べる名著です。ぜひ、人生をゲームとして、長期的に攻略する方法を学んでいきましょう!
1. ロングゲームをプレイする
私にはやらなければならないことがある。どんなに疲れていても休む訳にはいかない。
著者は、過去に忙しい毎日を送っていた時、そう思っていたそうです。午前9時半からロサンゼルスで行われるミーティングのために、朝5時の飛行機に乗り、午後6時までずっとミーティング。翌日も朝からミーティングをこなし、また飛行機に乗って、午後5時半にアトランタに到着し、クライアントとのディナーミーティング…。
著者は、その全てをこなせると思っており、実際その週も滞りなく終わったのは事実。しかしこの時、著者が味わったのは一種の孤独のようなものでした。私はなぜこんな風に生きる人生を選んでしまったのだろうと疑問を感じるほどに。
長期の思考
この時の著者のように、多くの現代人がゆとりを失っています。常に何かに急かされ、追い詰められ焦っています。友人や同僚のSNSを見て、何でみんなこんなにうまくいっているのかと圧倒されてはいませんか?
誰もが薄々感じているように、何かに追われすぎて生きるのは、どこか間違っています。他人と比較することなく、自分だけの成功の定義を見つけ、自分のペースで人生を生きる。私たちは、そろそろそういった生活を手に入れてもいい頃のはずです。
その時に重要なのは、長期の思考です。
ロングゲームをプレイする
長期の思考があれば、危機の時の助けとなり、最も大切な目標に向けて歩む力になります。もちろん、状況に合わせて柔軟に対応しなければいけません。ただ、すべてを支えるのは長期の思考であり、それがなければ柔軟に対応することはできません。目先の利益の誘惑に負けず、不確実であるものの価値のある将来の目標に向かって努力を続ける。これが、ロングゲームをプレイするということです。
もちろん、それは簡単なことではありません。しかし、すぐに結果が出ることばかりを求めるこの世界で、意義深く長続きする成功を手に入れたいのであれば、これが最も確実な道です。ほとんどの人は気がついていませんが、たとえどんなに小さな行動でも、確かな戦略を持って毎日続けていれば大抵のものは予想より早く手に入るものです。
そこで大事になるのは、余白、集中、信念です。
2. 余白を作る
ここからはまず、余白について解説します。なぜ余白が大事なのかというと、自分の時間とエネルギーを賢く使うためには、余白が必要だからです。すでに満杯になっているコップに、それ以上液体を注ぐことができないように、ある程度の余白が要ります。
私たちが日々忙しい理由は、主に2つ。1つは忙しさで自分をアピールしているから。もう1つは忙しいと深く考えずに済むからです。私たちは忙しい状況を、密かに歓迎しています。
忙しいことは社会的なステータス
コロンビア・ビジネススクールのシルビア・ベレッツラが行なった研究によると、少なくともアメリカでは忙しいことは社会的なステータスの高さにつながります。自分は忙しい、休む間もなく働いているというのは、自分は求められる人材だとアピールしているのと同じ。その結果、周りからも一目置かれるようになります。
つまり、激務をこなしそれを周りにアピールするのは、意識的にせよ無意識的にせよ、自分の自尊心にとって大切だということです。さらに、忙しさには麻薬のような働きがあります。忙しく仕事に熱中していれば、直視したくない答えが出るような質問を考える時間がなくなるからです。
ただし、いつも忙しさをアピールするような生き方をする人たちは、自分の人生をコントロールできません。とてつもなく成功している人に会ってみると、彼らは大抵の中で落ち着いていて、こちらの話をすごく集中して聞いてくれるものです。そうした人たちこそが、全てをコントロールしていると言えるでしょう。そう考えると、忙しさの魅力も半減しますよね。
NOというルールづくり
では、忙しい毎日から抜け出す、あるいは最低でも少しは余白を作る実用的な方法はないのでしょうか?
それは、他人の要求や誘いへの対応に決まりごとを作ることです。例えば、
- 相手の都合に合わせて、自分のスケジュールを変えない
- 自分にとって都合の良い日時の時だけ承諾する
- こちらの近所まで来てもらう、あるいはあらかじめ相手の近くに行く
- 用事があるときに会うことにする
- ただ理由もなく人に会うのを止める
- 会う相手は厳選する
- 仕事上の有力なつながりがある人か、会って面白そうな人だけにする
などです。これだけでも、スケジュールは少しマシになるでしょう。ロングゲームのプレイヤーになりたい人にとって、NOという言葉は究極の武器になります。
著者の友人の言葉を借りるなら、すごい、最高、絶対やる、そういう風に感じないのであればNOと言う。これで絶好のチャンスをつかむ確率は上がるはずです。
3. 正しいゴールを見分ける
自分のスケジュールに余白ができたら、心の余裕もできるはずです。すると、新しい可能性が生まれてきます。そこで、次に注目したいのが集中すべきゴールです。
私は何を目指せばいいのだろう?という疑問が浮かぶように、そもそもどこにゴールがあるのか。正しいゴールはどうやって見分ければいいのか。
欧米社会で最も優先されるのは、大抵お金の最適化。つまり、稼げるキャリアを選ぶことです。ただし、収益ばかりにこだわる会社は原材料をケチったり、論理的に問題のある行動に走りがちです。
また、金銭ばかりにこだわる人は、人間関係を犠牲にする傾向があります。長い目で見れば、このどちらが良い結果につながるとは甲乙つけ難いです。それなら、お金ではなく、意義に最適化する人生はどうでしょうか? 社会の大義のために働いたり、家族との時間や趣味に意義を見出したり、やりがいを最優先させるという道です。
自分の興味に最適化する
自分の情熱や生きがいがない人には、著者は自分の興味に最適化するという方法をおすすめしています。自分が人生のどの地点にいようとも、まだ生きがいが得意なことを見つけていないかもしれませんが、興味のあること、面白そうだと思うことならあるはず。
例えば、鳥の写真を撮ることが好きだとします。生きがいや人生の意義と呼ぶほどのことではないと感じるかもしれません。しかし、それを面白いと思うなら、好奇心に導かれるままに熱心に学ぼうとしませんか?そこから何か価値のある道につながることもあります。個人的、あるいは職業的に大切なつながりができて、そこから成功できたりするかもしれません。
現状の犠牲者にならない
そんなのは単なる夢物語では? お金持ちの道楽では?
と、自分に最適化することに、疑問を持つ人もいるかもしれません。奨学金や住宅ローンの返済があるから、今の仕事を辞められないという人もいるはずです。これは確かにもっともな主張ではありますが、それは短期での話です。
ロングゲームの大前提は、現状の犠牲者にならないこと。今の時点での現実が、この先も永遠に続くわけではありません。好奇心を刺激されることやもっと学んでみたい分野があっても、今すぐ仕事を辞めそれに没頭することはできないかもしれません。
しかし、時間をかけて小さな戦略的ステップを積み重ねることならできます。自分の本当に興味があることを知るには、現時点の時間の使い方を振り返ってみるといいでしょう。加えて、自分が興味を持つ対象のパターンを認識することも大切です。
4. どこに集中するのがベストか
正しいゴールが見分けられたら、今度は限られた時間とエネルギーをどこに集中するのがベストなのかを考えます。
Googleは2004年に、ユニークなコンセプトを打ち出しました。それが「20%ルール」です。簡単に説明すると、これは従業員に対してGoogleに大きな価値をもたらす新しい何かに自分の時間の20%を使ってもらうというもの。この時間のおかげで、興味のある分野を探求する余裕が生まれます。全ての時間を注ぎ込みはしないので、リスクも低く抑えることができます。
もちろん、たった20%とはいえ、自分の時間を実験のために使うのは簡単ではありません。実際、このルールを実行している人は20%ではなく、120%。つまり、本来の仕事にプラスしてやっています。そのため、20%の時間を活用しているのは、Googleの社員のわずか10%でした。
Google社員の忙しさを考えれば妥当な数字のようにも思えますが、もし実際に20%の時間を捻出すれば、私たちはそれだけで少数派の一人になります。しかも、人生のキャリアに大きな変化を起こすことができるかもしれません。先ほどもお伝えした通り、スケジュールに余白を作ってチャンスのための時間を生み出しましょう。
一つの目標に全集中する
自分のキャリアがずっと停滞している、同じところで足踏みしている気がしていると感じていませんか?
それは大抵の場合、自分の長所に頼りすぎているのが原因です。苦手な分野、興味のない分野を無視しているか、あるいは挑戦を怖がっていないでしょうか。成果を最大化するには、最も大切な一つの目標に全集中すべきです。そこで考えるべきは、現時点でどこに投資をすれば最も大きなリターンが期待できるか。その投資のための時間を増やすには、どうすればいいかということです。
このような一点集中には、ライバルを大きく引き離す力があります。どこに集中すべきかを決めるときに役立つ戦略は、起業家のジャルド・クライナーとが提唱する、探すモードと集中モードです。
探すモードと集中モード
多くの人は、最先端のものにすぐ飛びついてしまう傾向があります。しかし、これは究極の短期思考です。興味の対象が次から次へと変わっていては、一つのアイデアをじっくり育てることはできません。探すモードと集中モードには、それぞれ相応しいタイミングがあります。自分が今どちらのモードにいるべきかを知るのが重要です。
顔を上げて新しいチャンスを探すモードなのか、下を向いて目の前のことに集中するモードなのか。この2つを混同してはいけません。目の前のうまくいっていること、まだ完全に可能性を引き出せていないことに全集中すべきなのに、顔を上げてキョロキョロしながら新しいチャンスを探していると、上を向いたり下を向いたりして首が痛くなるだけです。
著者は、このモードの切り替えを採用してから、探すモードと集中モードそれぞれにある一定の期間を割り当てるようにしているそうです。その期間は大抵は3ヶ月から半年、探すモードの時はディナーや会議にたくさん出て人脈を広げます。
しかし、集中モードに入ったら、よほど緊急の場合を除いて誘いはすべて断ります。その間に大きなプロジェクトなどに没頭するということです。このように、探すモードと集中モードで人生にメリハリをつけると、集中力を有効に活用することができます。
波で考える
そして、さらに視点を広げれば自分の時間を賢く使うためには、波で考えるという方法もおすすめです。これは、
- キャリアを学ぶ
- 想像する
- つながる
- 収穫する
という4つに大きな波に区切って考えるというやり方です。それぞれの波が教えてくれることをきちんと学び、軽やかに次の波に乗り移れば、成長を続けながら前に進むことができます。
1つ目の学びの波では知っておく必要がありそうで、今の自分が知らないことを全てリストにしてそれに関する知識を蓄えます。自分のビジネスを始めるなら、まずは知識をつけることが必要です。目指している分野の大体の枠組みをつかみ、自分の方向性も見えてきたら、今度は世の中にアウトプットします。
次の波は、想像すること。他の人の考えやアイディアを十分に吸収しそれらを評価する目も養い、共感できるものがあれば、完全に間違っていると感じるものもあるそのような状況になったらそれらを自分の中で熟成させそして自分の意見を形成します。最初は小さなステップでも構いません。同じような考えを持つ人たちと出会う必要があります。そして小さな努力を継続しているうちに、迷いが出てくることがあるでしょう。それは自分の発信を誰も見てくれなかったり、成果が目に見えて現れなかった時などです。
そこで必要になるのが、第3の波“つながる”です。正しい人とつながれば、サポートをもらえます。その結果自分の声をもっとたくさんの人に届けることができます。狭い人脈しかないことは、いずれ成長への足枷になるので、時間を作ってでも他者とつながり新しいコミュニティに参加することで、成功への大きな足掛かりになります。
そして、最後の波が積み重ねた努力から豊かな実りを収穫することです。挑戦の過程で友人知人を増やし同僚クライアント業界のリーなどと尊重と信頼を基盤にした関係を築いていったら、彼らから仕事を紹介してもらい、そして自分からも同じことをします。
3つの波をうまく乗りこなしたら、そろそろ第4の波の時期を楽しんでもいい頃です。ただここで大切なのが、収穫が最終目的地ではないということです。第4の波には賞味期限があります。期限が来たらまた新しいことに挑戦し、新しい何かを創造しなければいけません。
どんなに優秀な人でも、ずっと同じことだけを続けていては、ゲームに勝つことはできないです。ロングゲームをプレイするには、ゲームでの自分の立ち位置を知りその時点で必要なスキルを見定める・波で考えるができるようになればこの時々にあったツールを選び、停滞するのを避けることができます。それが勝利の方程式です。
今回紹介した、ドリー・クラークさんの書籍「ロングゲーム いま自分にとっていちばん意味のあることをするために」については、まだまだ紹介できていない部分が多いです。おすすめの本ですのでぜひ手にとって読んでみてください!