国家に依存するな、国家を道具として使え。この記事では、橘玲さんの書籍「貧乏はお金持ち~雇われない生き方で格差社会を逆転する~」という本を紹介します。
貧乏なのにお金持ち?どういうことか理解できないですよね。本書の内容をざっくり言うと、労働基準法で守られ雇用契約に縛られたサラリーマンに比べ、複数の人格を使い分けることができる“フリーエージェント(会社に雇われない生き方)”が不利な選択ではない!
自由に生きることは素晴らしい。自由な人生にとって一番大事なのは、自分の手でお金を稼ぐこと。そして、マイクロ法人は国家を道具として使うための有効な手段である。ということが書かれています。
終身雇用が崩壊した現代において、修得すればいつまでも使える具体的ノウハウが盛りだくさんで、将来フリーエージェントを目指すビジネスマンにとても参考になります。
さっそく内容を見ていきましょう!
<橘玲さんの書籍はこちらでまとめて紹介しています>
1. 雇われない生き方
失業してしまったとしたら、あなたに戻る場所はあるでしょうか?
情報通信の急速な進化とグローバル市場の拡大に伴い、他の国に比べて経済成長が停滞している日本は年功序列や終身雇用による人件費を負担できなくなってきています。
会社は一生社員の面倒を見てくれて、退職すれば悠々自適の年金生活が待っているというのは、もう過去の話になってしまいました。また、日本ではサラリーマンを社畜と呼ぶことがあります。自由を奪われ、主体性を失い、会社に人生を捧げた奴隷という意味です。
そんな見下されることも多かったサラリーマンの日常ですが、現在はどうでしょうか?
非正規社員を正社員にせよ!という声が多く上がるようになっています。驚くべきことに日本では、いつのまにか社畜こそが理想の人生になってしまっています。大学まで出てなるべき目標が、社畜になることに希望があるでしょうか?
著者は、現代は自由の価値がかつてないほどに劣ったものに扱われていると言います。誤解のないように言うと、著者はサラリーマンという生き方を否定しているわけではありません。社畜が立派だとされていることに、薄気味悪さを感じているそうです。
サラリーマンを辞めて、みんな独立しよう!ということではなく、一人ひとりが自由に生きるための戦略を持とうよ!と言っています。ここでいう自由とは何でしょうか?
それは、“人生を選択できる経済的な土台”のことです。家族を養うだけの財力がなければ、国や会社に依存せざるを得ません。自由な人生にとって一番大事なのは、自分の手でお金を稼ぐことです。
そのためには一体どうすればいいのでしょうか?
2. 人的資本を投資するすべての人が起業家
経済の世界で私たちがお金を獲得する方法はたった一つ。資本を市場に投資し、リスクをとってリターンを得ること。資本主義経済において、人の働く能力とは、稼ぐ力のことです。
これを経済学では、人的資本と言います。
若い時はみんな自分の人的資本(= 労働力)を投資して、給料というリターンを得ます。人的資本は知識や経験技術資格などによって、一人ひとり異なります。統計的な結果ではありますが、大きな人的資本を持っている人はたくさん稼げ、少ししか持っていない人は貧しい暮らしで我慢しなくてはなりません。
ここで企業と会社について考えてみましょう。資本主義で生き延びる方法は、所有している人的資本や金融資本を市場に投資し、利益得て資本を増殖させることです。この経済活動を、企業と言います。
企業 = 会社と思いがちですが、企業とは市場参加者すべての総称です。
企業の主体が起業家で、通常は中小企業のオーナー社長などのことを指します。しかし、人的資本を投資しているという意味では自営業者だけでなく、サラリーマンも立派な起業家です。そして日本語だと区別が曖昧ですが、企業活動のための効率的な仕組みとして考え出されたのが会社です。
3. サラリーマンとそれ以外の違い
会社は個人がバラバラに働くより大規模かつ高速にお金を増やし、資本を増殖させることができます。よくサラリーマンを続けるべきか、脱サラすべきかが問題になりますが、著者はこの考え方が間違っていると言います。
原理的には私たちはみな起業家であり、無意識的にも常に自らの人的資本を最大化し、満足度が最大になるように選択しているそうです。とはいえお金がないと生きてはいけないので、現代においては稼ぐことが最も大事な基準となっていますね。そんな中で、サラリーマンとそれ以外の起業家には決定的な違いがあります。
サラリーマンは、お金を稼ぐ経済活動の主要部分を会社に委託してしまっていることです。具体的には会計・税務・ファイナンスがあります。
- 会計は、収支や資産を管理する仕組み
- 税務は、所得税や消費税などを国家に納税する経済行為
- ファイナンスは、資金の流れを把握し資本市場から効果的に資金調達すること
これらはどれも起業家にとっては、生死を分かつほど重要なことです。しかし、サラリーマンは源泉徴収と年末調整により会社に税務申告を委託しています。
4. マイクロ法人という選択肢
脱サラの成功率はあまり高くなく、一般に3割程度と言われています。これにはいろいろな理由がありますが、会社の財務状況を把握できず、余分な税金を払ったり高い利息でお金を借りていれば、あっという間に失敗してしまいますよね。では、脱サラ以外に資本主義社会で生き抜くにはどうすればいいのでしょうか?
その一つの選択肢となるのが、“マイクロ法人”です。
1人で株式会社を設立した場合、株主と取締役が1人しかいません。もちろん、その株式会社を設立した本人です。また、会社は個人とは独立した法人としての人格を持っています。この1人のみの会社のことを、本書では“マイクロ法人”と言います。
最近では会社に雇われない生き方、“フリーエージェント”が一般化してきています。フリーエージェントの最下層は、派遣社員や非正規労働者。それらに対し上位には、プログラマーやコンサルタントなど、さまざまな分野で活躍している独立契約者がいます。
彼らは第二のマイクロソフトやGoogleを目指しているわけではありません。会社に所属するのではなく、自分自身が会社になる理由は、その方が圧倒的に有利だからです。
会社を作ることによって、個人とは異なるもう一つの人格、“法人格”が手に入ります。これにより、
- 収入に対する税負担率が大幅に低くなる
- まとまった資金を無税で運用できるようになる
- 多額のお金をタダ同然の利息で、無担保で借りることができる
などのメリットを得ることができます。
このような奇妙な出来事は、国が市場に介入していることにより引き起こされています。その最大のものは世界中の国家が好き勝手に貨幣を発行していることですが、それ以外にも市場には制度的な歪みがあります。
つまりマイクロ法人を起こすことは、国家介入による異常な事態を利用して富を生み出す道具です。また、フリーエージェントの最大の特権は、会社の就業時間に縛られることなく自分の時間を管理できること。携帯電話とパソコンさえあれば始められる仕事はいくらでもありますし、フリーエージェントを支える社会構造も整ってきています。
個人でも大企業並みのビジネス基盤を構築できるようになれば、もはや1か所に多数の労働者を集める必要もなくなります。著者によると、マイクロ法人化により、多くの人が有利な状況を手に入れているそうです。
前編はここまで、後編ではマイクロ法人化のメリットをより深掘りしていきます!